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地上の地獄

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2015年9月。トルコの海岸に3歳の男児の遺体が打ち上げられた。名前はアイランちゃん。家族4人で内戦が続くシリアからボートで脱出したが、転覆して溺死した。覚えている人もいるだろう▼あれから2年半余。アサド政権軍は今月、化学兵器による攻撃を行ったとされる。ぐったりとして酸素マスクを当てられる幼児の写真も報道された▼政権側は「でっち上げだ」と否定するが、今なお多くの市民が巻き込まれ、犠牲になっているのは間違いない。これに対してトランプ米大統領は、英、仏と共にシリアの化学兵器関連施設に向けミサイル計105発を発射した▼化学兵器の使用はどんな理由であっても許されない。だが米側は確かな証拠も示さず、国連安保理の同意がないまま武力を行使した。暴力の応酬は混迷を深めるだけだ▼内戦による犠牲者は30万人以上ともいわれる。たとえ化学兵器を排除できたとしても、他の武器による犠牲者はなくならない。重要なのは米英仏と政権の後ろ盾であるロシアや中東各国による、内戦終結に向けた外交努力のはずなのに▼昨年10月に政権軍の砲撃で左目を失い、母親も亡くした生後6カ月の男児は今月、父親とトルコに無事脱出したそうだ。傷つく子どもたちを見て、為政者たちはどう思うのだろう。がれきと土煙に覆われた「地上の地獄」(グテレス国連事務総長)は、いつまで続くのか。2018・4・17

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