PR
PR

3.今後の論戦は 自民、合意へ糸口探る

 憲法改正論議を主導したい自民党は「緊急事態条項」の新設や7月の参院選で導入された「合区」の撤廃を糸口に、与野党の話し合いを深めたい考えだ。本丸の9条改正をにらんだ「お試し改憲」との見方もある中で、今、政治家たちはどのような問題意識で議論に臨んでいるのか―。背景や海外の事例をおさらいしてみた。

Q 緊急事態条項って何? 一時的に政府権限強化


 2014年1月、タイで反政府デモ激化。15年11月、フランスで同時多発テロ。今年7月、トルコでクーデター未遂。非常事態に見舞われたこの3カ国では、治安と秩序の維持を目的に、政府の権限を一時的に強化する「国家緊急権」が発動されたんだ。その結果、フランスでは令状なしの家宅捜索なども行われた。この「国家緊急権」を憲法や法律に明記する規定が緊急事態条項だ。現在100を超す国が憲法に定めている。

 災害大国の日本では、東日本大震災をきっかけに自民党が必要性を強調し、12年の党憲法改正草案に盛り込んだ。大災害のほか、武力攻撃やテロなども想定し、国家緊急権を発動する大まかな仕組みを定めている。ここでは首都直下地震の発生時に、政府が草案の緊急事態条項に基づいてどんな対処をする可能性があるのか、イメージしてみよう。

 東京、午後6時。帰宅ラッシュを震度7の揺れが襲った。至る所で家屋が倒壊し、火の手が上がり、道路は大渋滞。けが人であふれる避難所に医師の姿はなく、ラジオは混乱に乗じた犯罪を伝え始めた―。

 首相がこの状況を緊急事態と判断すれば、閣僚を集めた会議(閣議)を開いて「緊急事態宣言」を出す。この宣言によって国民は国の指示に従う義務が生じ、内閣は国会を通さずに法律と同じ効力がある政令を出せるようになる。混乱の拡大を防ぐため駅などへの立ち入りや外出が禁じられたり、あなたが医師なら被災者の救護を国から命じられるかもしれない。

 緊急事態の間、国会議員の任期は満了時期を迎えても延長される。混乱のさなかの選挙を避けるためだ。

 ただ、一時的でも人権を制限したり、国会に諮らずに法律並みのルールをつくったりすることは民主主義の原則に反する。草案によれば宣言の効力は100日間維持でき、国会が承認すればさらに延ばせるため、際限なく続く恐れもあるんだ。人権制限や内閣の一存でつくれる政令の中身も曖昧で、デモや報道など政権に不都合な動きを抑える口実にもなりかねない。

 そもそも草案が想定する事態は災害対策基本法や国民保護法など今ある法律でも対応可能で、改憲は不要だという指摘も根強い。与党の公明党や野党第1党の民進党内では、政府の権限強化に慎重な一方、国会議員の任期延長には理解を示す声も少なくないんだ。

どうしん電子版のご案内
北海道新聞 購読の申し込みはこちらから
新聞配達スタッフ募集
ページの先頭へ戻る