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<永瀬充のパラスポーツ訪問記>元選手が見た平昌パラリンピック 観客、取材者にもう少し配慮を

 3月9~18日に開催された平昌(ピョンチャン)冬季パラリンピックを取材してきました。パラアイスホッケーGKとして4度、パラリンピックに出場しましたが報道の立場では初めてで、車いすで全会場を回り、貴重な経験ができました。元選手の報道関係者は少ないようで、国際パラリンピック委員会のweb版では「(ホッケーの)スティックをペンに持ち替えたNAGASE」と紹介されました。大会は日本勢を含め熱戦が続き、支えるスタッフたちが明るく活躍していました。一方で、障害がある観客らの移動手段の案内などには、課題を感じました。

■元選手が見た平昌パラリンピック

 競技の取材は、東海岸沿いの江陵(カンヌン)で行われたパラアイスホッケーを担当しました。日本は2大会ぶりの出場で、道内勢は須藤悟主将(47)ら3人。41・9歳という平均年齢や、61歳のGK福島忍選手が注目されましたが、結果は5戦全敗で最下位の8位でした。

 試合後、取材スペースに指定されている「ミックスゾーン」で柵越しに選手や中北浩仁監督(54)に質問しました。選手時代は柵の内側から答える立場でしたが、今回は外側から、試合のポイントやプレーの意図などを尋ねました。取材相手は引退した3年前まで共に戦った仲間で、取材しながら激励もしました。

 初の表彰台に立った銅メダルの韓国や、決勝でカナダに逆転勝ちした米国などの試合は素晴らしく、興奮しました。日本が世界で戦うためには、選手の発掘や若返りが以前にも増して急務、と強く思いました。

 競技以外の取材では、障害のある観客や報道関係者にとっての会場の使い勝手や、移動のしやすさなどを調べました。選手時代はバスで宿舎と競技会場の往復が大半でしたが、今回は多くのことに気づきました。

■車いすで乗れず

 まずは日本から会場へ。新千歳から空路で西海岸にある仁川(インチョン)に到着。江陵まで、整備された韓国高速鉄道(KTX)で移動しました。列車の床面がホームより75センチも高く驚きました。車いすの私は可動式の電動リフトで乗降しましたが、時間がかかりました。大きな荷物を持った人たちも乗り降りに苦労していました。江陵までは約3時間で、昨年訪れた際に4時間かかった高速バスより早く、車中は広くて快適でした。

 現地で苦労したのが、市街地と競技会場、競技会場と競技会場の間の移動手段の情報でした。移動手段は「選手・役員」「大会関係者」「報道関係者」「観客」に大別されて用意されていました。私は当初、報道用バスに乗ろうとしましたが、乗降口はステップ式で車いすでは無理でした。

 そこで、氷上競技の会場となっている江陵地区、雪上競技の会場になっている約40キロ離れた山間部の平昌地区を含め、複数の案内所を2日間尋ね回り、やっと、大会関係者用の車いす対応車を利用できることが分かりました。応対してくれたスタッフは皆熱心で親切でしたが、班の担当が異なると、対応車の詳細までは分かりませんでした。対応車は便利でしたが、予約しても、車を待つ場所や時間がはっきりしない状況がずっと続きました。

 観客用バスも利用しました。江陵、平昌両地区にそれぞれ複数の路線があり、各路線にステップ式バスのほか、電動スロープが付いた低床バスもありました。ただ低床バスの停留所は、江陵駅前などでは一般の停留所から離れた場所にあり、案内が不十分でした。

 競技会場についても課題がありました。アルペンスキー・スノーボード、クロスカントリー・バイアスロンの2会場は、ミックスゾーンが雪上に設けられ、車いすでは近づけなかったり、車いす用の取材席の柵は高く、競技が見えづらかったりしました。新設のアイスホッケー場はエレベーターが少なかったと思います。近くのカーリング場はやや古く、後から設置したエレベーターは、担当者を探さないと利用できませんでした。

 このほか江陵の街では新たに整備された地区でも、飲食店前に段差があったり、スロープが急だったりして、車いす利用者1人では入れない店がありました。

■札幌に生かして

 今回、私以外にも車いすの報道関係者がおり、車いすの観客も多く見かけましたが、障害者が区別され、健常者と別な対応になりすぎている感じがしました。障害のある人もない人にも、自然にスムーズに対応できる仕組みになれば良いと思います。

 選手たちの最高のパフォーマンスや、声援を送る観客たち、大会を支えるボランティアらの姿を目の当たりにして勇気を感じ、共生社会を目指すパラリンピックの意義を再認識しました。冬季五輪・パラリンピック招致を目指す札幌にも、参考になる点が多かったのではないでしょうか。雪が多く、都市規模も大きい札幌では、より入念な準備が必要でしょう。目指すべき姿を多くの人と共に考えていきたいと思います。(北海道新聞パラスポーツアドバイザー、バンクーバーパラリンピック・パラアイスホッケー銀メダリスト)

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