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摂食障害、万引の一因 札幌など女性受刑者増 衝動制御できぬ場合も

 札幌刑務支所を含む女性が入る全国14施設で、拒食や過食を繰り返す「摂食障害」の女性受刑者数が増加している。法務省の昨年の調査では全体の5%を占め、うち66%が万引での服役だった。摂食障害は近年、女性による常習的な万引の背景の一つとして指摘されている。極端なダイエットやストレスをきっかけに発症するケースが多く、慢性化すると低栄養などで衝動が抑えられなくなり、食料品を盗むことも。患者数は国の推計で数十万人に上り、専門家は障害への理解と早期治療の必要性を訴える。

 「食べたい衝動に駆られると身の回りを食べ物でいっぱいにしたくなり、頭の中ではもう食べている。現実と想像の区別がつかなくなり、逮捕されて初めて万引したことに気付いた」。2月上旬、札幌刑務支所の面会室に現れた美奈(37)=仮名=は語り始めた。

 身長166センチ、体重は標準の半分程度の32キロ。20代後半から大量に食べては吐く生活を繰り返してきたという。万引で有罪判決を受け、執行猶予中の昨年7月に再び万引をして逮捕。約1カ月後の保釈直後、財布に3万円が入っていたにもかかわらず、スーパーで牛乳やヨーグルトを盗んで逮捕され、勾留された。

 法務省によると、摂食障害の女性受刑者数は調査が始まった2013年以降、増加傾向で、昨年7月時点で199人。札幌刑務支所でも今年2月時点で12人(全体の4%)いる。

 日本摂食障害協会(東京)によると、拒食や嘔吐(おうと)が続くと低栄養で脳が萎縮し「大量の食料品を確保しておきたい」といった衝動が制御しづらくなり、「どうせ吐くんだから買うのはもったいない」との動機で万引する人もいるという。

 協会副理事長の鈴木裕也(ゆたか)医師は「万引は障害の症状の一つ。心の病であるという本人の自覚や周囲の理解が欠かせない」と指摘する。

 体重管理が厳しいスポーツ選手の発症例も目立つ。昨年8月には女子マラソンの元日本代表選手が栃木県内で万引で逮捕された。公判で現役時代の体重制限から摂食障害を発症していたことが明らかになった。

 一方、美奈が発症した原因は元夫からの激しい暴力だった。30歳で家を出てからも暴行の記憶や幻聴に苦しみ、ストレスから過食に。一度に10合の米を食べては嘔吐し、月の食費が100万円を超えたこともある。複数の精神科を受診したが、専門医が少なく、「睡眠導入剤を処方されただけ」で、次第に病院から足が遠のいた。札幌地裁は2月中旬、懲役1年2カ月の実刑判決を言い渡した。


 <ことば>摂食障害 体重や体形に対する過度のこだわりなど、心理的な要因に基づく食行動の障害。極端なやせ願望や体重制限、ストレスが原因とされ、若い女性の患者が多い。拒食や嘔吐の繰り返しで著しく痩せる「神経性やせ症」(拒食症)と、過食した後に嘔吐や下剤の使用で体重を維持する「神経性過食症」(過食症)に大別される。本人の自覚が薄く、過食症の場合は周囲に気付かれにくいのも特徴。重症化すると栄養失調との合併症で死亡したり、うつ病などを併発し自傷行為につながる事例もある。

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