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自衛隊明記、三つの危険 自民改憲案 「軍」として役割拡大/暴走の歯止めない/他国は軍隊と見る

 自民党内で自衛隊の存在を明記する改憲案をめぐる議論が大詰めを迎えている。党憲法改正推進本部の執行部は20日の会合で取りまとめを目指す方針。これまで「戦力不保持」などを定めた憲法9条2項の維持や削除のほか、細かく文言を変えた条文案が示されたが、どの案も自衛隊の任務の変容や統制の在り方など大きな疑問が残る。そもそも憲法に「自衛隊」を明記すると何が変わるのか。専門家が挙げる「三つの危険」について考えた。(報道センター 荒谷健一郎、森貴子)

■任務の変容

 「災害救助よりも、『軍』としての役割が拡大するのではないか」と話すのは北星学園大の岩本一郎教授(52)=憲法学=だ。

 自衛隊は自衛隊法で、侵略行為からの防衛を「主たる任務」、災害派遣など公共秩序の維持を「従たる任務」とする。2015年に安全保障関連法が成立し、集団的自衛権の一部行使も主たる任務に加わった。

 自民党内で出された改憲案の多くは、自衛隊設置の目的として「我(わ)が国の平和と独立を守る」などと明記する。岩本教授は「国防の目的が前面に書かれれば、自衛隊は憲法上ただの『軍隊』になる。自衛隊法より、上位の憲法に定めた目的が優先されるだろう」と話す。

 政府は従来「生命や自由、幸福追求への国民の権利」を定めた憲法13条などを根拠に、自衛のために「必要最小限度の実力」の保持は認められるとしてきた。その実力組織が自衛隊だ。

 岩本教授は「そもそも必要最小限度という言葉も、自衛隊の任務もあいまい」と指摘。「任務や役割が不明確なまま、憲法に自衛隊という器の言葉だけ書かれれば、安保法のように法律で任務が拡大されても、上位にある憲法が正当化の根拠を与えてしまう」と強調する。

■統制の限界

 「自衛隊」を憲法に書いた時、暴走の歯止めとなる仕組みはあるか。室工大の清末愛砂准教授(46)=憲法学=は「どの改憲案にも厳格で具体的な制約条項はない」とし、「戦前、軍部の暴走を許した反省から、現行憲法は『実力組織=戦力』を持たないという徹底的な抑制をした。その反省が全く生かされていない」と強調する。

 現憲法で固有名詞を書いた機関は国会と最高裁判所、内閣、会計検査院のみだ。清末准教授は「自衛隊が憲法上の組織になれば、法律で定めた防衛省より上位になってしまう」と説明。「現憲法に明記されたのは三権など独立機関だけ。一方、自衛隊は内閣の下の行政組織にすぎない。自衛隊を憲法に書けば、三権から独立した組織と捉えることになり、大きな矛盾と統制が及ばない余地を残す」

 自民党内では「国会の承認、その他の統制」に服するとした改憲案も示されたが、承認が事前か事後かはあいまいだ。清末准教授は「事後承認が可能なら歯止めにならない」。また南スーダン国連平和維持活動(PKO)の日報隠蔽(いんぺい)など国会を欺く行政側の姿勢を挙げ「国会が監視機能を果たせるだけの情報が得られると思えない」と警告する。

■隊員のリスク

 元陸上自衛隊員で、陸自第5旅団(帯広)などに所属した末延隆成さん(56)は「自衛隊が憲法上の組織になれば、これまで以上に他国から軍隊と受け止められ、危険にさらされる可能性は高まる」と危惧する。

 安保関連法には、弾薬提供や給油など他国軍への後方支援も盛り込まれた。国際法上、武力行使を行う軍隊なら、拘束された軍人は「捕虜」となり、ジュネーブ条約などで人道的扱いを受ける。だが自衛隊は軍隊ではなく、政府も後方支援任務について「武力行使に当たらないため、条約の適用はない」と答弁している。末延さんは「他国は軍と見るのに、日本は軍ではないと言う。その矛盾が自衛隊明記で拡大する。例えば自衛隊員が捕虜になった時どう扱われるか。非常に立場が不安定だ。現場の不安は増すだろう」と話す。

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