PR
PR

<「安倍改憲」を問う 論憲考憲2018>下 権力による変更 本末転倒 小林節さん=慶応大名誉教授

 ――かつては「自民党のブレーン」と言われていましたが、なぜ最近は政権批判を強めているのですか。

 「『憲法改正はタブーではない』と訴える若手憲法学者が珍しかったのか、1980年代からたびたび自民党の会合に招かれ、改憲論議に参加していました。しかし、2001年の米中枢同時テロ後、小泉政権がイラクへ自衛隊を派遣し疑問を感じました。現行9条の下で派遣が許されるはずはありません。改憲派であっても現にある憲法を守るのは最低限の常識です。さらに集団的自衛権の行使を容認した15年の安全保障関連法が決定的でした。専守防衛の自衛隊が、なぜ米国の戦争に参加しなくてはいけないのか。テロの危険を招くだけです。自民党は恐ろしい『いかさま集団』だと思うようになりました」

 ――安倍晋三首相が9条への自衛隊明記を提案し、自民党内の改憲論議が加速しています。

 「自民党全体が『安倍チルドレン』になったかのようです。自衛隊明記案は、これまで自民党が目指してきた軍隊保持とは異なる『くせ球』ですが、ある意味ではうまい球です。今の自衛隊を憲法に書き込めば、自衛隊違憲論は成り立たなくなり、安保法も追認されるからです。ただ、自民党は過去に自衛隊を違憲だと言ったことは一度もありません。突然『憲法学者の間に違憲論があるから』と言い出して、改憲を急ぐのは違和感があります」

 ――改憲項目は自衛隊明記案のほかに教育充実、緊急事態条項、参院の「合区」解消という3項目も検討されていますが、改憲の本当の狙いは何でしょうか。

 「その3項目はどれも改憲の必要はなく、教育充実などは他党向けのリップサービスでしょう。かつて私が、やりやすい条項から手を付ける『お試し改憲』の手法を教えてしまったことを後ろ暗く思っています。自民党が本当にやりたいことは、戦力不保持を定めた9条2項を削除し、世界の軍事大国と並ぶ『普通の国』になることです」

 ――年内にも改憲案が発議される可能性がありますが、国民の理解は追い付いていると思いますか。

 「改憲勢力が衆参両院で3分の2超の議席を持っている以上、発議はすると思います。野党はそれを止める手だては無いという前提に立ち、迎え撃つ準備をすべきです。憲法は国民が権力を縛るためのものであり、権力者がそれを煩わしいと思って変えるのは本末転倒です。それをもっとメディアが伝えていく必要があると思います」(聞き手・東京報道 大城道雄)

どうしん電子版のご案内
北海道新聞 購読の申し込みはこちらから
新聞配達スタッフ募集
ページの先頭へ戻る