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1次リーグ スウェーデン戦 勝率7%からの大逆転劇

 【2月19日 カーリング女子1次リーグ 日本対スウェーデン】
 LS北見の日本は第8エンドを終えて2―4とリードされたが、第9エンドに2点、そして最終エンドで1点をスチール(不利な先攻側が得点すること)して、見事に逆転勝ち。1次リーグ5勝2敗となり、準決勝進出に大きく前進した。

 2―4とスウェーデンのリードで迎えた第9エンド、そして、4-4の同点からの最終エンドでキーとなったショットについて、北海道大学大学院の山本雅人教授と、山本研究室のカーリング戦略AI「じりつくん」が分析した。



【第9エンド。先攻・スウェーデン(黄色)、後攻・日本(赤色。残り2投ずつ】

 「じりつくん」は、各エンド開始時における得点差から、ゲーム全体の勝率を求めることができます。これは、膨大な自己対戦にもとづいて計算されるものです。

 それによると、第9エンド開始時で2-4、LS北見が後攻のこの試合で、LS北見の勝率は約7%と、かなり追い詰められた状況でした。

 そんな状況で、第9エンドに入り、残り2投ずつの局面に進んでいきます。

【図1】第9エンド。先攻・スウェーデン(黄色)、後攻・日本(赤)。残り2投ずつ
【図1】第9エンド。先攻・スウェーデン(黄色)、後攻・日本(赤)。残り2投ずつ

 「じりつくん」は、ある局面について、エンド終了時にどちらが何点取る可能性が高いか(期待得点分布)を、膨大なシミュレーション結果にもとづいた学習により見積ることもできます。

 例えば、この局面【図1】は、LS北見がうまく相手のストーンの裏に回り込んでナンバー2のストーン(左下の赤)を作ったところです。ここで「じりつくん」は、日本(赤色)側から見たこのエンド終了時における期待得点分布を以下のように見積もりました。

3点以上得点  : 1.5%
2点得点    :12.1%
1点得点    :75.1%
1点スチール  : 7.5%
2点以上スチール: 3.7%

 つまり、LS北見が1点(75.1%)を取って3-4で第9エンドを終了、スウェーデンが有利の後攻で第10エンドに進む可能性が非常に高い、ということを意味します。LS北見にとっては、まさに崖っぷちです。

 しかし、ここでスウェーデンにとっては痛恨のミスがでます。

【図2】スウェーデンが、ガードストーンからLS北見の赤のストーンをテイクするショットをミス。矢印のように黄色のストーンだけを出す
【図2】スウェーデンが、ガードストーンからLS北見の赤のストーンをテイクするショットをミス。矢印のように黄色のストーンだけを出す

 ガードストーンからLS北見の赤のストーンをテイクするショットをミスして、【図2】の矢印のように黄色のストーンだけを出してしまいました。

【図3】第9エンド。スウェーデンがミスした後、LS北見の投球する局面
【図3】第9エンド。スウェーデンがミスした後、LS北見の投球する局面

 その結果、LS北見の投球する際には【図3】の局面となりました。この局面での期待得点分布をみてみると、以下のようになります(カッコ内の数字は、前記スウェーデンの投球前の数字)。

3点以上得点  :2.0% (1.5%)
2点得点    :71.8% (12.1%)
1点得点    :24.0%(75.1%)
1点スチール  :1.4% (7.5%)
2点以上スチール:0.8% (3.7%)

 これを見ても分かるように、LS北見が2点を取る確率が12.1%から71.8%に大きく増えました。スウェーデンにとっては、いかに重要なショットをミスしたかが分かります。

 このエンドでLS北見が2点取ると、最終エンドは先攻となるものの、スチールすることで勝利できます。最終エンドでLS北見がスチールして勝つ確率を、「じりつくん」は22%と見積もりました。もし、このエンドで1点しか取れなかった場合の勝つ確率は3.5%で、LS北見にとって非常に重要な局面だったと言えるでしょう。

 実際にLS北見は2点を取り、第10エンドに進みました。


■スチールで逆転勝利の確率はわずか10.6%

 【第10エンド。先攻・日本(赤色)、後攻・スウェーデン(黄色)。残り1投ずつ】

 4-4の同点で迎えた最終エンドは、スチールを狙うLS北見が作ったセンターガードを外される苦しい展開でしたが、最後にわずかながらチャンスが巡ってきます。

【図4】第10エンド。LS北見(先攻)の残り1投の局面
【図4】第10エンド。LS北見(先攻)の残り1投の局面

 先攻のLS北見、残り1投の局面です【図4】。この局面での「じりつくん」の評価は以下の通りでした。

1点以上スチール(勝ち):10.6%
1点以上失点(負け)  : 89.4%

 LS北見にとっては、非常に厳しい数字です。ここでLS北見は、相手のナンバー1ストーンを自身の赤ストーンで少し押すことにより弾き出し、自身のストーンを中央に2個残す戦略をとりました【図5】。「じりつくん」の最善手は直接黄色のストーンを狙うショットでしたが、戦略としてはほぼ同等の評価でした。

【図5】第10エンド。LS北見の最終ショット。相手のナンバー1ストーンを自身の赤ストーンで少し押すことにより弾き出し、自身のストーンを中央に2個残す戦略
【図5】第10エンド。LS北見の最終ショット。相手のナンバー1ストーンを自身の赤ストーンで少し押すことにより弾き出し、自身のストーンを中央に2個残す戦略

 結果的にこの選択したショットは見事に決まり、【図6左】のようにLS北見のストーンのみがハウスに残る局面となりました。

【図6】スウェーデン(黄色)の最終ショット前(左)と、最終ショットの後の結果
【図6】スウェーデン(黄色)の最終ショット前(左)と、最終ショットの後の結果

 ここで「じりつくん」は、黄色のスウェーデンは中央へのドローショットを狙いにいくことで、勝率は87%になると見積もりました。

 しかし、こういった局面で世界のトップチームは、ドローショットよりも赤のナンバー1ストーンを弾き出してそのままステイする、ヒット&ステイ【図6右】を選択するのが一般的です。

 実際にスウェーデンもヒット&ステイを選択しました。しかし、スウェーデンのショットは赤ストーンの少し内側に当たり、シューター(投げたストーン)が少し内側奥に流れ、わずか5センチ差でLS北見の赤ストーンがナンバー1となりました。

 この結果、5-4でLS北見の劇的な逆転勝利となりました。「じりつくん」の見積もりでは、第9エンド開始時のわずか7%という勝率からの、見事な逆転劇だったのです。


山本雅人(やまもと・まさひと)教授 1968年、札幌出身。札幌旭丘高、北海道大学工学部情報工学科卒。同大学院工学研究科システム情報工学専攻博士後期課程修了。バックギャモン(西洋すごろく)のジャパンオープン、日本選手権などで優勝経験あり。自身もカーリングチーム「Backgammon」でプレーする。

じりつくん 山本研究室(自律系工学研究室)で開発中のカーリング戦略AI。AI同士を戦わせることで、100万の局面を学習している。ある局面について、想定される数万ショットの中から最善手を選ぶ。スイーピングやアイス状況の変化という要素はないものの、期待得点計算やリスク計算などにより、戦略面で実戦の参考になるように開発を目指している。

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