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<厚真 移住者はマチの資源>上 自然美、快適な生活人気

 胆振管内厚真町市街地から南へ3キロの豊沢地区。森の中に広々とした一戸建て住宅が立ち並ぶ。1984年に分譲を開始した移住者向け住宅地「ルーラルビレッジ」。転入者数が転出者数を上回る「社会増」を2014年から4年連続で達成した人口約4700人の厚真町がまちづくりの柱に掲げる移住施策の象徴だ。

 総面積43・5ヘクタール、283区画。複数区画を所有したり別荘として所有したりする人もおり、現在は約70世帯が居住する。1区画約千平方メートルと広いので家庭菜園や美術工芸に親しむ人や田舎暮らしに憧れる都市部出身者も暮らす。

■木工作家に転身

 元小学校教員田中隆行さん(62)は6年前に妻みどりさん(57)と日高管内日高町から移住し、自宅横に工房を構えて木製食器を手掛ける木工作家として第二の人生を楽しむ。「朝から晩まで周りを気にせず、打ち込めるのがいいところ」と笑顔を見せる。

 豊かな自然に加え、苫小牧市や新千歳空港への交通アクセスの良さも人気の理由。ルーラル自治会長の門脇和雄さん(64)は「道内では積雪が少ない気候に魅力を感じる人も多い」。

 ルーラルビレッジの成功を踏まえ、町は10年、隣接地に移住者向け住宅地第2弾「フォーラムビレッジ」を造成し、110区画を販売。既に40区画以上が売れた。一角には古民家を活用した商業施設もオープンし、新旧住民の交流拠点となっている。

■苦難を乗り越え

 移住施策には紆余(うよ)曲折もあった。一帯はもともとは71年に国策として始まった苫小牧東部地域(苫東)の開発計画に伴い、働く人たちのベッドタウンになるはずだった。町は町土地開発公社を通じて、民有地約100ヘクタールを先行取得した。苫東は産業構造の変化で当初計画が頓挫。宅地計画は宙に浮いた一方で用地取得費の金利は膨らみ、町は83年に約21億円の負債を抱えた。

 窮余の策として町が打ちだしたのが一区画の敷地面積を広げ、自然を残した宅地として分譲することだった。ルーラルビレッジは分譲開始から7年で全区画を売り切り、その後の移住者受け入れの足がかりを得た。事業に携わった元町政策審議室長館山睿(さとし)さん(77)は「羅針盤を失った船のように宅地計画が漂流した時代もあったが、今となっては大きな財産になった」。

 町は2000年代から活性化に向け移住者受け入れを本格化。都市部から移住者を呼び込む「地方創生」の先駆けとなった。ただ、他市町村も移住促進に力を入れるなど競争は激化しており、厚真町はさらなる施策を打ち出した。(苫小牧報道部の伊勢裕太が担当し、3回連載します)

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