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経営へ深刻な影響鮮明 拓銀破綻20年アンケート 体質強化、プラスに捉える声も

 北海道新聞社が道内主要企業に行った北海道拓殖銀行(拓銀)の破綻に関するアンケートで自由回答欄を設けたところ、3割弱にあたる約50社が率直な思いを寄せてくれた。記述からは、破綻が長期にわたる景気低迷などを招き、道内企業に深刻な影響を与えたことが鮮明に浮かび上がる。一方、危機を乗り越えたことで企業の体質強化が進んだなど、プラスに捉える回答も見られた。


 経営への具体的な影響に触れたのは11社。「仕入れ先から取引停止措置を受けた」(卸小売業)、「合併した」(出版印刷業)、「保有していた拓銀株が紙くずになった」(サービス業)などが上がった。

 「拓銀破綻や、ほかの金融機関の貸し渋りで倒産に追い込まれた企業もあった」(食料品工業)、「大手取引先の倒産などで多くの顧客(法人)を失った」(卸小売業)など、取引先の倒産に巻き込まれたとの声もあった。帝国データバンク札幌支店のまとめでは、拓銀破綻から1年で、拓銀をメインバンクとしていた道内企業112社が倒産している。

 拓銀が破綻した97年は、4月に消費税が3%から5%に引き上げられた年。札幌の建設業は「(拓銀破綻との)相乗効果で全般的に経済が冷え込んだ」と振り返る。ほかにも「北海道の開拓と発展を支えた都市銀行がなくなり、消費が低迷し、景気に多大な影響を与えた」(出版印刷業)、「積極的な投資に臆病になった」(食料品工業)など、消費や企業活動に心理的な悪影響を及ぼしたとの声は多かった。

 新興企業の育成機能が失われたとの意見も目立った。札幌のサービス業は「拓銀のバブル期の融資の姿勢は褒められたものではない」とした上で、「破綻後は大胆に企業を後押しする体制がなくなった」と指摘する。札幌の卸小売業も「北海道の地域振興の旗振り役がいなくなり、スケールが小粒になった」とした。

 一方で、拓銀破綻に伴って倒産した企業について、札幌の別の卸小売業は「バブル崩壊で大きな問題を抱えていた企業が退場させられただけ。一般企業に大きな影響があったと思わない」との見方を示す。

 拓銀ショックが、企業の成長や道内金融システムの機能強化をもたらす契機になったとの前向きに受け止める意見もあった。卸小売業は「旧来の銀行対企業の関係に変化を生じさせ、企業の経営体質強化につながり、本州企業と競合できる企業も成長した」、金融証券業は「はい上がっていく企業あり、元拓銀行員が従業員として中小企業を支えている実例あり、長期的にはマイナスだけとは言えない」と強調。「北洋銀行が強くなり、安心できる金融機関ができて良かった」(窯業土木業)との声もあった。(経済部 宇野一征、高橋俊樹)


■公的支援に一定の効果 札幌学院大・平沢教授

 拓銀破綻が道内企業に与えた影響について、札幌学院大の平沢亨輔教授(都市経済論)に聞いた。

 民間調査会社によると、全国の倒産企業の負債総額に占める道内分の割合は、拓銀が破綻した1997年は7・9%と、前年の2・7%を大幅に上回りました。倒産件数でも同様の傾向でした。全国的に景気が低迷していた時期で、道内は特に厳しい状況だったことが分かります。今回のアンケート結果が示した通り、拓銀破綻による道内経済全体への影響は小さくありませんでした。

 一方、自社への影響については、「まったく受けなかった」「ほとんど受けなかった」の合計が「大きく受けた」「多少受けた」の合計を上回っています。これは、拓銀と直接取引がなかった、あるいは少なかった企業への影響が小さかった上、破綻直後に道が緊急融資枠を設けるなど政府系金融機関や地方自治体が主に中小企業に対して手厚い金融支援を行ったことや、景気対策として公共事業を増やしたことの効果があったからでしょう。

 取引先の倒産や資金繰りに苦しんだ企業はありましたが、拓銀の正常先債権への融資の大半が比較的スムーズに北洋銀行に引き継がれたことも大きいと思います。

 足元の道内経済には、拓銀破綻の直接的な影響はほとんど残っていません。ただ、その後の公共事業の縮小や人口減少などにより停滞を脱しきれている状況とはいえません。

 破綻から4年後の2001年に道内中小企業を対象に調査を行ったところ、「拓銀破綻で不便になったこと」として、「経営のアドバイス」「国際的な情報、本州の情報」との回答が8~9%台でした。道内経済底上げのためにも、地域産業の育成、企業の海外進出の支援における地域金融機関の役割はますます重要になっていくでしょう。

 <略歴> ひらさわ きょうすけ 1954年、長野県出身。北大大学院博士後期課程単位取得退学。北大助手などを経て、99年から現職。主な著書に「拓銀破綻後の北海道経済」(共著)など。

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