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恩返し

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歌手松任谷由実さんの実家が東京で呉服店を営んでいるのは、ファンの間ではよく知られた話だ。成人の日の8日早朝、その店に突然女性が飛び込んできた。振り袖販売・レンタル業者「はれのひ」が突然営業をやめたため、振り袖を着られなくなった新成人だった▼100人以上の予約が入っていたが、事情を聴いた店はなんとか都合を付け、複数の女性の着付けや振り袖のレンタルを引き受けた▼同様の店は他にもかなりあったらしい。はれのひが着付けをするはずだった横浜市のホテルでは、別の業者がスタッフを集めて約50人の新成人の着付けを手伝った▼泣きだす人や放心状態の人が続出する中「困っている人を助けるのは当然」と、この会社の社長は無償で対応した。無事に振り袖を着ることができ、涙ながらにお礼を言って、式典会場に向かった女性もいたという▼社長は福島県いわき市で東日本大震災の被災経験があった。その際、多くの人に手を差し伸べてもらったことから「何か恩返しを」と、ずっと考えていたそうだ。ぎりぎりの窮地を救われた新成人は、きっと人の温かさに心を震わせたに違いない▼震災の時に寄せられた多くの人の優しさが、時を超えて新成人に伝わった。この優しさはいつか、別の人に伝わるのだろう。世知辛い世の中である。けれどこんなうれしい話を聞くと、まんざらでもないのかなと思えてくる。2018・1・12

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