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揺らぐ日韓合意 原点を尊重するべきだ

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 従軍慰安婦問題を巡る2015年の日韓合意に対し、韓国の康京和(カンギョンファ)外相が「新方針」を発表した。

 日本政府に再交渉は求めないものの、日本が拠出した10億円を凍結し、同額を韓国政府が出す。日本拠出分の扱いは政府間で協議するというのが柱だ。

 これでは合意の根幹を見直すに等しい。10億円は元慰安婦の名誉と尊厳を回復し、心の傷を癒やすために韓国政府が設立した財団の事業に、日本政府が協力するとの趣旨で出したからだ。

 日韓合意は、両国の真の和解と未来志向の関係を築く出発点である。その原点を見失うことは双方の利益にならない。

 文在寅(ムンジェイン)大統領はきのうの年頭記者会見で、公式合意の事実は「否定できない」としつつ、「被害者を排除したまま解決を図ったこと自体、誤った方式だ」と述べた。

 合意の意義を否定するような姿勢は納得できない。

 財団の現金支給事業では、合意時点で存命の元慰安婦47人のうち36人が受け取ったか、受け取る意思を示した。

 もちろん一人一人にさまざまな思いはあろう。だが、事業が一定の進展を見せていた事実から文政権は目をそらしていないか。

 文氏は日本の10億円が「問題解決に向けて良い目的で使われるなら望ましい」とも述べた。

 では、これまでの目的が間違っていたのか。韓国が出すという10億円はどんな趣旨のお金なのか。新方針は曖昧で分かりにくい。

 大統領選で再交渉を公約した手前、国内の強硬世論を無視できない。一方で対日関係の決定的な悪化も避けたい―。文氏の発言からはそんな思惑が透けて見える。

 どっちつかずの姿勢で日韓関係をこじらせるよりは、合意の意義を尊重し、日本との協力により事業を着実に進めていくのが元慰安婦のためでもある。

 日本政府にも配慮が必要だ。

 文氏は会見で「日本が心から謝罪するなどして、被害者たちが許すことができた時が本当の解決だ」と述べた。

 謝罪は合意に盛り込まれ、安倍晋三首相が当時の朴槿恵(パククネ)大統領に表明した。元慰安婦に届いていないというのなら、どうすれば伝わるのか日韓で知恵を絞るべきだ。

 それは「最終的かつ不可逆的解決」をうたった合意の精神に反するものではなく、発展させることになる。「ゴールポストは1ミリも動かさない」というかたくなな姿勢では、事態は好転しない。

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