PR
PR

激動を越えて 「改革」のひずみ点検の時

[PR]

 平成の始まりとほぼ時を同じくして、政界では衆院への小選挙区制導入を柱とする政治改革の議論が沸騰した。

 自民党の金権腐敗体質の一掃を求める中堅・若手議員の動きに派閥内部の権力闘争が絡み、1994年に関連法が成立した。選挙制度の激変は政界再編に発展した。

 カネのかからない政策本位の選挙と、政権交代可能な二大政党制の実現が大義だった。

 では、それが現実の政治に投影されていると言えるだろうか。

 確かに、2009年と12年には政権交代が実現した。

 しかし、今あるのは安倍晋三首相の下での「1強政治」のひずみと、対抗勢力となり得ずに分裂した野党の姿である。二大政党制の理想は色あせて見える。

 「改革」の名の下に積み重ねられてきた政治の在り方を、ここで検証してみる必要がある。その上で、政治のシステムに機能不全があるとすれば正すのが、主権者である国民への責任だ。
少数の声 届きにくく

 小選挙区48%、比例代表33%。

 昨年の衆院選での自民党の得票率だ。過半数に達しないのに議席の占有率は60%に上る。小選挙区制導入時から指摘されていた現象が、今回も繰り返された。

 にもかかわらず、安倍首相は必ずしも民意を正確に反映していない数の力を使い、特定秘密保護法や安全保障法制、「共謀罪」法といった国民に反対の根強い政策を強引に進めた。

 背景にあるのは首相官邸と党執行部への権力集中だ。

 小選挙区制導入で自民党の派閥が弱体化した一方、政治改革と連動する形で内閣機能が強化されていった。政府と与党の力関係は大きく変わった。

 政策決定過程は自民党内の議論を積み上げる形から、経済財政諮問会議などを活用したトップダウン型へ移行した。14年の内閣人事局設置により、官僚機構の急所である人事権も官邸が握った。

 本来なら、強い力を持った首相ならなおのこと、独善に陥らぬよう少数意見に耳を傾ける努力が求められよう。安倍政権にそれが見られないのが残念だ。
対立より合意形成を

 1強体制を許している非力な野党勢力にも責任はある。

 かつての民主党の失敗は、目指す社会の理念や構想がないまま、政権を取るために考えの異なる議員を寄せ集めたことに起因した。

 現在も野党各党は、憲法、安全保障や消費税など基本政策を巡る見解が分かれている。無理に束ねれば同じ失敗を繰り返すだろう。

 急速に人口が減る日本では、経済財政や社会保障を持続可能にするために中長期の将来像を描き直す必要に迫られている。

 そこで大事なのは与野党のいたずらな対立ではなく、多様な民意を政治に反映させることだ。

 選挙制度が単純小選挙区ではなく比例代表並立となったのは、そうした狙いもあったはずだ。

 野党全体への国民の支持は少数ではない。先の衆院選比例代表で立憲民主党、希望の党、共産党、社民党の得票率は計47%に上る。

 国民のさまざまな声を政治が少しでも有効に吸い上げるために、選挙制度や国会の在り方をもう一度根本から議論していい。
国会の復権が急務だ

 急がれるのは首相の権力を監視、抑制すべき国会の復権だ。

 国際的に変化の早い時代だ。時には首相の指導力で大胆に政策を推進することが必要になる。

 しかし官邸主導を強化してきた結果、何が起きているか。

 まず、官僚の「忖度(そんたく)」が公正な行政をゆがめたと指摘される学校法人森友、加計学園の問題だ。

 国民は疑念を募らせているのに解明が進まない。与党に「強い首相」への忖度があるとすれば国権の最高機関の看板が泣く。

 ドイツには議会の少数派も国政調査権を行使できる規定がある。参考にしてはどうだろう。

 国会軽視の極め付きは、首相が憲法に基づく野党の臨時国会召集要求を放置した末に行った、昨年の大義なき衆院解散だ。

 立憲民主党は首相の解散権の制約を憲法論議の課題に挙げているが、法律で一定の対処が可能かどうかも検討の余地があろう。

 思い起こしたいのは1998年の金融国会である。衆参のねじれという事情があったとはいえ、政府・与党が野党案を採用して金融再生法を成立させた。

 金融危機に際し与野党が垣根を越え、立法府としての役割を果たしたと評価することもできる。

 いま、その立法府の存在意義が問われている。与党も野党も党利党略を離れ、国民代表の責務として劣化した基盤をつくり直す―。平成初期の政治改革論議には、少なくともそんな熱気があった。

どうしん電子版のご案内
北海道新聞 購読の申し込みはこちらから
新聞配達スタッフ募集
ページの先頭へ戻る