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激動を越えて 企業と銀行、関係再構築を

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 不正会計はじめ数々の不祥事が発覚し、経営危機が続く東芝が先月、再生への一歩を踏み出した。

 約60の海外投資会社が6千億円の出資に応じ、借金が資産を上回る債務超過がやっと解消された。

 危機を招いた原因は東芝の企業体質にあるとはいえ、問題が長引いている理由の一つに、銀行との関係の変化が挙げられよう。

 東芝はグループ全体で15万人の社員を抱え、下請け企業も多い。

 1990年代までなら、メインバンクが企業とともに再建計画を練り、債権放棄など痛みの伴う支援を引き受けたに違いない。

 ところが、銀行はその役割を避けただけでなく、稼ぎ頭の半導体事業の売却を要求し、自分たちの債権を守ることを最優先した。

 企業と銀行の「冷めた関係」は90年代前半のバブル経済崩壊の後遺症であり、現在の日本経済を覆う閉塞(へいそく)感の一因でもある。

 後ろ盾を失った企業は萎縮し、新たな投資を抑制するようになった。銀行も融資先を見つけられず、本来の金融仲介機能を十分に果たせていない。

 今こそ両者の役割を見直し、関係を再構築する必要がある。

■「目利き」の力高めよ

 土地や株などの資産価格が実体を超えて上がり続けるバブル経済は、「平成」が始まった89年ごろにピークを迎えた。

 企業は土地を開発して転売するだけで、本業の何倍もの利益を稼ぎ、銀行はそのための資金を競うように貸し込んだ。

 ほどなくバブルははじけ、地価上昇を前提にした融資は回収困難な不良債権と化した。その処理に苦慮した拓銀が97年に破綻、他の大手行も危機に見舞われた。

 金融危機から20年たち、銀行業界の風景は様変わりしている。

 都市銀行13行は、三菱東京UFJ、三井住友、みずほ、りそなの4行に再編された。

 店舗統廃合などのリストラを進め、20年前に30兆円を数えた大手行の不良債権は昨年3月末に3兆円を切った。金融危機を教訓に、各行が経営安定に努めてきたことは評価できる。

 半面、個人向けカードローンなど目先の収益確保にばかり力を注ぎ、企業の成長を長い目で見守る姿勢を欠いている。

 気になるのは、いまだに不動産中心に担保重視の融資が続いていることだ。このままでは、IT系ベンチャーのように資産は乏しいが、成長性が高い企業を支援することは難しい。

 企業の将来性を見極める「目利き」の力を高め、リスクを取って育てる。銀行は、本来期待されている役割への転換を急ぐべきだ。

■経営の「プロ」が必要

 バブル崩壊後の「失われた20年」を経て、日本企業の姿勢もすっかり内向きになった。

 象徴的なのが、未来への投資をためらい、内部留保の積み上げに精を出す動きだ。2008年にリーマン・ショックを経験し、その傾向がさらに強まった。

 国内企業の現預金は昨年3月末時点で211兆円となり、10年前よりも64兆円上積みされた。

 一方で、企業の利益のうち働く人の取り分を示す労働分配率は低下の一途をたどる。

 投資と賃上げを抑え、貯蓄に励む。この姿勢が変わらない限り、経済活性化はおぼつかない。

 もちろん低成長とグローバル化の荒波の中で、企業が新しい価値を生み出すことは容易ではない。

 高い志と独創的な発想、的確な判断能力を兼ね備えた経営者のリーダーシップが不可欠だろう。

 そうした資質を持つ人を早くから訓練し、経営の「プロ」に育てる仕組みを持つことが、これからの企業には必要なのではないか。

■地域金融をどう守る

 北海道経済は、拓銀破綻直後の不況と混乱を克服した。

 危機から20年が過ぎた今、北洋銀行、北海道銀行の2行と、信金、信組がおしなべて収益を悪化させているのが気がかりだ。

 道内に限らず、高齢化と人口減が加速する地方の金融機関の経営環境は厳しい。高齢者の貯蓄は維持されても、若者は流出し、融資先が減っていく。

 マイナス金利政策の影響で融資の利ざやも稼げず、このままでは経営難が続出しかねない。

 増資や社債発行で資金調達できる大企業と異なり、地方の中小企業は、地元の金融機関なしに経営は成り立たない。

 金融機関自身の経営努力は当然だが、地方の構造的な問題を独力で解決するのは困難だ。やはり公的な支援は欠かせない。

 金融庁は今年、検査局を廃止し、金融行政の重点を「検査と処分」から「育成」へと移す。

 地方の課題に応じた新規サービスを後押しするなど、地域金融を守る知恵を官民で探りたい。

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