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激動を越えて 「想定外」なくす備えこそ

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 何千、何万もの命が一瞬にして奪われる。そんな災害は現代の日本では起こり得ないと思い込んでいた人は、少なくないはずだ。

 しかし、それが覆された。

 1995年の阪神大震災、2011年の東日本大震災、93年の北海道南西沖地震(死者・行方不明者230人)。地震と津波だけを取り上げても、「平成」の間にこれだけの大災害が起きた。

 天変地異は避けられない。だが人知を尽くせば、減災は可能だ。

 あらゆる災害を想定してハードとソフトの両面で対応を整え、「想定外」をなくしておきたい。

減災に不断の努力を

 地球の表面は、海底の海洋プレート、陸地の大陸プレートという十数枚の岩板に覆われ、境界でせめぎ合っている。

 うち4枚が日本に集中し、海洋プレートが、列島の載る大陸プレートの下に沈み込み、ひずみがはじけて地震や津波を起こす。

 東日本大震災は、プレート間地震の典型だ。大地震の後、大津波がまちをのみ込んだ。死者・行方不明者は1万8440人に上る。

 最悪で死者32万人を想定する南海トラフや、道東沖の巨大地震の危険性も指摘されている。予測は難しいとはいえ、被害を最小限に食い止める対策が急務だ。

 国は、千年に1度クラスの巨大地震を想定し、監視を強め、国民に情報を発信する必要がある。

 ただ、巨大防潮堤の建設など、カネも人手も時間もかかる公共工事には、限界があろう。

 道内の沿岸では、約45万人が津波の浸水域で暮らすとされ、津波到達まで最短1分の町もある。

 災害時の拠点となる役場や病院、学校など優先順位をつけての高台移転や、海沿いの避難タワー建設への後押しが要る。

 ソフト面の目配りも不可欠だ。

 避難先や仮設住宅での生活で病を悪化させるなど、東日本大震災の関連死は3600人を超す。

 仮設住宅は原則2年しか住めない。大災害時には短すぎる。高齢者や障害者ら災害弱者の安全を守るには、医療や介護の機能を備える工夫も求められる。

助け合いの仕組みも

 住民自身が災害から身を守る意識を高めることも大切だ。

 直下型地震だった阪神大震災では、家屋や家具の下敷きになった圧死が8割強を占めた。半面、近所の人たちの手で、がれきに埋まった多くの命が救い出された。

 地域で助け合う仕組みの再構築を急ぎたい。

 避難では、「釜石の奇跡」が手本になる。

 岩手県釜石市は東日本大震災で大津波に襲われたが、約3千人の小中学生の99・8%が助かった。

 津波被害の教訓から、自分の命に責任を持って高台にすぐ逃げよという、三陸地方の「津波てんでんこ」の言い伝えが奏功した。

 ボランティアの重要性が改めて認識されたことも、胸に刻んでおきたい。がれき処理など力仕事だけではない。話し相手になることは、被災者の心のケアになる。

 過去には、被災地側の受け入れ準備が遅れる例もあった。自治体や民間団体の連携で改善したい。

原発リスクも焦点に

 東日本大震災は、昔はなかった新たな災害リスクの存在を浮かび上がらせた。沿岸に立つ原発だ。

 東京電力福島第1原発は炉心溶融という未曽有の過酷事故を起こした。今も帰還困難区域などが残り、5万人が避難している。

 首をかしげるのは、震災後も原発の再稼働に積極的な政府の姿勢だ。30年の電源構成で原発は20~22%とし、専門家からは新設などを求める声さえ出てきた。

 一方、各種世論調査では過半数が再稼働に反対している。原発への不安は根強い。こうした現状を反映し、司法判断にも変化の兆しが見える。

 広島高裁は昨年、再稼働した四国電力伊方原発3号機(愛媛県)を巡り、広島市の住民らが運転差し止めを求めた仮処分の即時抗告審で、差し止めを命じた。

 原発から130キロ離れた九州の阿蘇カルデラ(熊本県)で9万年前に起きた破局的噴火を想定すると、火砕流が原発敷地に達する可能性が否定できないと判断した。

 同様の懸念は、九州にある各原発などのほか、北海道電力泊原発でも排除できないだろう。

 北電は34の火山について原発に影響を与える可能性は十分小さいとし、洞爺カルデラでは火砕流シミュレーションも行い、敷地には到達しないと結論づけた。

 しかし、日本火山学会元会長の宇井忠英北大名誉教授は、支笏、洞爺の両カルデラで噴火があれば「火砕流は泊原発も含む全方位100キロ以上に及ぶ」と指摘する。

 巨大噴火の確率は1万年に1回だとしても、より安全な社会を目指す不断の努力が欠かせない。

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