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回顧2017 多様な言論確保する場を

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 国内、外で混迷と亀裂が深まった。残念ながら、こうくくらざるを得ない1年である。

 「米国第一」を掲げるトランプ大統領が就任し、超大国のリーダーとは思えぬ傍若無人な振る舞いに全世界が翻弄(ほんろう)されている。

 北朝鮮は6回目の核実験を強行し、弾道ミサイルの発射を繰り返す。ミサイルは2度も北海道の上空を通過した。これに対し、圧力一辺倒の米国に日本も同調するものの、解決の糸口は見えない。

 この北朝鮮情勢や少子高齢化問題などを時代がかった「国難」と訴えて、安倍晋三首相は10月の衆院選に大勝し、政権に返り咲いてから丸5年を迎えた。

 首相は経済指標の好転を強調するが、景気拡大の長さが高度成長期の「いざなぎ」を超えても、一向に実感はわかず、将来への不安や閉塞(へいそく)感は晴れない。

 むしろ、今年の流行語大賞に「森友」「加計」問題を象徴する「忖度(そんたく)」が選ばれたように、長引く「安倍1強」のひずみが国民にも意識されたと言えよう。

■寛容さを失った米国

 温暖化対策の枠組み「パリ協定」からの離脱、イスラム圏からの移民制限、エルサレムをイスラエルの首都と認定―。

 トランプ米政権の発足以来、次々に打ち出される極端な政策に、多くの人が不安を抱いたろう。

 白人至上主義者と反対派の衝突が流血の惨事となった際、大統領が両者を同列視する認識を示し、非難されたことも記憶に新しい。

 こうした言動が反発を招いても、トランプ氏は意に介さない。それどころか、批判をうそと決めつけ、口汚く罵倒する。

 女優のメリル・ストリープさんが「軽蔑は軽蔑を生み、暴力は暴力を生む」と懸念したように、対話を拒絶し、他人を侮辱するような権力者の態度は、社会に悪影響を及ぼさずにはおくまい。

 米国では差別主義者が行動をためらわなくなったとの指摘があり、人種対立が激化した。

 米国が民族や文化の多様性を認め合う寛容さを失えば、分断は世界に波及する恐れがある。

 トランプ氏は現実を直視し、軌道修正してもらいたい。

■真摯な議論はどこへ

 こうした事態は、日本には無縁と言い切れるだろうか。

 特定秘密保護法、安全保障関連法に続き、安倍首相は今年も、国論を二分する「共謀罪」法を数に物を言わせて強引に通した。

 安倍1強の下で、こうした手法が繰り返されるうちに、国会での審議は形骸化し、真摯(しんし)な議論さえ成り立たなくなっている。

 首相自身がやじを飛ばしたり、声を荒らげたりしたが、深刻なのは、ぞんざいな対応が官僚にも広がったことだ。

 端的に表れたのが「森友」「加計」問題である。

 財務省や文部科学省の担当者の口からは「記憶にない」「記録を廃棄した」といった驚くべき答弁が飛び出した。

 官僚は、時には、しゃくし定規なまでに、法律と手続きに忠実であるべき公僕だ。

 職務上の誠実さを捨てて口をつぐむのは、首相の意向を「忖度」してのことか、それとも、圧力を受けたせいか。

 官僚を含め政府がこぞって、まともな答弁を放棄した。野党議員だけでなく、その背後にいる国民を軽んじたに等しい。

 それは、ひいては国会の権威を損ねることになる。

■民主主義の原点こそ

 民主主義は本来、多様な民意を反映させようと努力する手間暇のかかるプロセスだ。

 ところが、現状は「決められる政治」「果断な指導力」と称して、熟議や手続きを省略し、少数意見を切り捨てている。権力の乱用と指摘されても仕方あるまい。

 年の暮れ、米軍基地が集中する沖縄で、看過できない卑劣な出来事が起きた。

 米軍ヘリが窓を落下させる事故があった小学校に、「やらせ」「後から建てた方が悪い」といった電話やメールが相次いだ。

 沖縄の現実への偏見と悪意に満ちた中傷である。

 他人の意見に耳を傾けることなく、ひたすら相手をののしるヘイトスピーチ(憎悪表現)とほとんど変わりがない。

 私たちは、こうした不当な圧力を受ける人の声に耳を澄まし、その訴えを伝える努力を続けたい。

 多様な言論の場を確保することが、民主主義の原点であり、権力の乱用に歯止めをかけることにもつながると信じるからだ。

 今年のノーベル文学賞を受賞したカズオ・イシグロ氏は「分断の時代に人々がまとまるようなことに関わりたい」と語った。

 世界の人々に向けて発せられた切実なメッセージだろう。

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