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エルサレム 身勝手な米の首都認定 

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 歴史的な経緯を無視した、あまりに身勝手な暴挙である。

 トランプ米大統領がエルサレムをイスラエルの首都と承認し、米大使館を商都テルアビブからエルサレムに移転する準備を始めると発表した。

 エルサレムはイスラム教、キリスト教、ユダヤ教の聖地である。イスラエルが永久不可分の首都と主張する一方、パレスチナも東エルサレムを将来の独立国家の首都と位置づけてきた。

 パレスチナのみならず、アラブの国々が猛反発するのは当然だ。

 トランプ氏は「米国の国益にとって最善と判断した」という。

 しかし、頓挫している和平交渉の再開は一段と困難になり、新たな衝突の火だねにもなりかねない。中東など各地で反米感情が高まる恐れもある。

 トランプ氏は大統領選で米大使館移転を公約に掲げており、支持者の歓心を買うのが目的だとしたら、短慮にすぎる。和平交渉再開のためにも、イスラエル寄りの姿勢を改めなければならない。

 イスラエルは1967年の第3次中東戦争で、3宗教の聖地がある東エルサレムを占領した。その後、東西合わせたエルサレム全域を首都であると主張している。

 しかし、国際社会はこれを認めておらず、エルサレムに大使館を置く国は一つもない。

 エルサレムの帰属を巡る問題は、それほど敏感である。

 米国が仲介し、パレスチナに暫定自治を認めた93年のオスロ合意でも、エルサレムの帰属は後の交渉に委ねられた。

 米議会は95年、米大使館のエルサレム移転を求める法律を制定したが、歴代政権は半年ごとに先送りしてきた。

 トランプ氏の首都認定はこうした長年の取り組みを根底から覆すものだ。中東和平で「新たなアプローチ」を始めるというが、具体的な方向性も示していない。

 そもそも和平交渉が進まないのは、イスラエルの強引な占領政策が一因である。

 東エルサレムを含む占領地で国際法違反とされる入植活動をやめないどころか、拡大している。米国がすべきことはイスラエルの強硬姿勢を抑え、交渉が開始できる環境をつくることであろう。

 河野太郎外相は「中東和平を巡る状況が厳しさを増す懸念がある」と述べたが、米政府方針への賛否には言及しなかった。トランプ政権との緊密な関係を生かし、軌道修正を働きかけるべきだ。

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