PR
PR

マイナンバーの情報連携が始まる(1)

富士通総研経済研究所主席研究員 榎並 利博

 2017年11月13日からマイナンバーによる情報連携が始まった。行政の事務手続の際、提出する書類を省略できるよう、異なる行政機関の間でマイナンバーから生成された符号をもとに情報をやり取りできる仕組みだ。2016年1月のマイナンバー制度開始の時と比べればマスコミの報道も静かなものだが、国民にとってマイナンバーの利便性を実感できるかは、この情報連携が鍵になるとともに、北海道民にとっては大きな恩恵となる可能性がある。

■誰の情報か確実に特定

 マイナンバー制度が始まったものの、マイナンバーのメリットがないと不満を持つ市民は多いだろう。実際、従業員などのマイナンバーを取扱う企業や事業者にとっては、マイナンバーの安全管理措置など余計な事務負担が増えただけと感じている。そして、税の申告や社会保障関係などの申請でマイナンバー提示を求められ、わずら煩わしいと思っている人も多い。

 そもそもマイナンバーとは、氏名・住所・生年月日だけに頼らず、確実に本人を特定するために付けられた番号である。かつて年金納付記録問題が起きたが、基礎年金番号という台帳の裏付けのない番号を使ったため、納付情報が誰のものか不明となり、結果として国民に大きな損害をもたらした。今後はたとえ氏名や住所が変更になろうとも、マイナンバーを頼りにその情報が誰のものであるか確実に特定できるようになる。


■行政手続の負担は軽減へ

 つまり、マイナンバーがあればその人の世帯構成や所得などの情報を把握できるため、行政手続きなどで市民の負担がだいぶ減ると想定されている。なぜなら、これまでは社会保障関係手続きで申請書などを提出する場合、自らの世帯構成や所得を証明するために住民票や所得証明書を添付しなければならなかったからだ。今後は情報連携でこれらの添付書類が省略される。

 諸外国では古くから番号制度を利用してこのような仕組みを構築していたため、わざわざ行政窓口まで来なくても電子申請で行政手続きが済む「電子政府」が進んでいた。これら先進的な国では個人の情報をマイナンバーで統合したり、マイナンバーで直接情報にアクセスしたりして個人情報を扱うのが一般的だが、日本では事情が異なる。日本では個人の情報を統合することは憲法違反とされ、しかも万全を期してマイナンバーで直接情報にアクセスすることを回避している。具体的には、図に示すように個人の情報は業務ごとに分散して管理され、情報へのアクセスは、マイナンバーから専用のネットワークシステムで生成された符号を使って行う仕組みになっている。

■北海道で北欧並みの「電子政府」

 これが日本特有の「情報連携」という仕組みである。2017年11月から本格稼働し、本来の開始時期からは4か月ほど遅れたが、その間自治体では入念なテストを繰り返し実行していた。マイナンバーによる情報連携が進展することで、添付書類が削減されるとともに電子申請も促進され、行政窓口へ出向くわずら煩わしさが軽減されるだろう。

 世界の電子政府ランキングでは、スウェーデン、フィンランド、デンマークなど北欧の国が常に上位に位置している。これは寒冷な気候や積雪のために、人々が移動や外出しづらいことと無縁ではない。北海道は北欧と同様な気候であるとともに面積も広大だ。情報連携の開始で、北海道で北欧並みの「電子政府」が実現する可能性がある。(2へ続く)

えなみ・としひろ 1981年東京大学文学部卒業、同年富士通株式会社入社。住民基本台帳など自治体システムの開発を担当。1996年株式会社富士通総研へ出向し、電子政府・電子自治体および地域活性化分野の研究に従事。マイナンバー関連の著書:『医療とマイナンバー(共著)』日本法令 2016、『実践!企業のためのマイナンバー取扱実務』日本法令 2015、『マイナンバー制度と企業の実務対応』日本法令 2014、『共通番号(国民ID)のすべて』東洋経済新報社 2010、『住基ネットで何が変わるのか』ぎょうせい 2003な
えなみ・としひろ 1981年東京大学文学部卒業、同年富士通株式会社入社。住民基本台帳など自治体システムの開発を担当。1996年株式会社富士通総研へ出向し、電子政府・電子自治体および地域活性化分野の研究に従事。マイナンバー関連の著書:『医療とマイナンバー(共著)』日本法令 2016、『実践!企業のためのマイナンバー取扱実務』日本法令 2015、『マイナンバー制度と企業の実務対応』日本法令 2014、『共通番号(国民ID)のすべて』東洋経済新報社 2010、『住基ネットで何が変わるのか』ぎょうせい 2003な


 <富士通総研 内外経済トピックス>では、富士通総研の協力により、北海道と関係の深い中国や東南アジア、また国内経済の最新情勢について、研究員による分析や提言を随時掲載します。企業戦略やビジネス展開、就職活動などにお役立てください。

どうしん電子版のご案内
北海道新聞 購読の申し込みはこちらから
新聞配達スタッフ募集
ページの先頭へ戻る