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<水産サバイバル 道東・記録的不漁の衝撃>上 サンマがいない 公海操業拡大、割れる賛否

 季節風が冷たさを増す根室市の花咲港。昨年まで7年連続日本一を誇るサンマの水揚げは今季、約2万7千トンでほぼ終了した。昨年を2割も下回りそうだ。「群れが薄くて、船の魚倉が満載になって帰ってきた日は一日もなかった。こんなことは今までない」。根室の70代の船主は嘆いた。

 道東漁業の主役のサンマは3年連続で記録的不漁に陥った。全国さんま棒受網漁業協同組合(全さんま・東京)によると、今年の道内の水揚げは10月末時点で前年同期比36%減の3万1622トン。全さんまの記録で過去最低の1969年(1万4237トン)以来の4万トン割れになりそうだ。

 今年は当初、サンマが嫌う暖かい水温の海域「暖水塊」が道東沖で8年ぶりに消滅し、魚群が近海に寄りやすいとみられていた。道立総合研究機構釧路水試の研究者は「初めてのパターン」と首をかしげる。

 そんな中、業界では新たな動きが模索されている。

 11月中旬、全さんま、流通・加工業界に水産庁幹部も交え、東京で開かれた懇談会。現在の主漁場の道東近海より沖の公海での操業拡大を求める声が相次いだのだ。「(資源保護のため)公海でサンマを捕らないよう頑張っても、日本にはプラスにならない」。公海に出ることの是非を巡り、出席者から怒号も飛んだ。

 サンマは例年、公海を北上しながら成長し、夏から秋にかけて群れの多くが道東近海に集まる。日本の漁業者は資源保護や船の燃料費節約のため、専ら夏以降の近海の魚群を追う操業を続けてきた。

 だが近年は5月ごろから、台湾、中国、韓国の大型船が公海でサンマを漁獲。特に台湾が日本の漁獲量を上回るなどし、資源減少を招いたとの見方がある。全さんまの八木田和浩組合長(日高管内様似町)は「決まった期間に沿岸で漁獲し、日本独自で資源を守ってきた流れが崩れ始めている」と危機感を口にする。

 こうした状況で日本も公海操業に乗り出せば、漁獲競争がさらに過熱しかねないが、実はその旗振り役となっているのは水産庁だ。

 同庁はサンマの国際的な資源管理のため、7月の北太平洋漁業委員会(NPFC)で国・地域別の漁獲枠設置を提案した。今年は合意できなかったが、今後を見据え、「公海を含む沖合域の漁獲体制の検討が極めて重要」(漁業調整課)とみる。日本が資源管理を主導しつつ、枠配分で損をしないよう、公海での実績づくりが必要との理屈だ。

 ただ、関係者によると、全さんまが今年行った組合員アンケートでは、これまで漁が解禁されてきた8月以前の公海サンマ漁に反対の回答が6割を超えた。特に組合員145人の大半を占める小型船は比較的値が高い8~9月に稼ぐだけに、値崩れを懸念する。漁業者の姿勢も一様ではない。

 11月上旬、釧路港で水揚げした日高管内浦河町の第83高漁丸(29トン)の高田悟漁労長(53)は「公海の漁獲が中心になるなら、サンマは俺らの捕る魚じゃなくなるな」とつぶやいた。極度の不漁に漁業関係者の立場の違いも複雑に絡み、現状打開の糸口は見えない。

 主要魚種の記録的不漁で淘汰(とうた)の波が押し寄せている道東水産業の現状を、釧路報道部の山田崇史、安房翼、根室支局の今井裕紀が3回報告します。

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