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第2部 十勝で輝く(1)人と人 都市と地方結んで

 全道の「夢追い人」を紹介する新北海道ひと紀行。第2部(5回)は十勝管内9市町村を巡る。広い大地の可能性を信じ、挑み続ける新世代の姿を追う。(報道センター 門馬羊次)

■憩いの場目指す
 ホテルヌプカ。帯広市中心部の小さなホテルのルーツをたどると、1本の映画に行き着く。

 2015年春、ユーチューブに投稿された短編映画「マイリトルガイドブック」。台湾人のヒロインが、十勝の美しい風景を旅する作品だ。アイヌ語で原野を意味するヌプカの総支配人、坂口琴美さん(40)は、映画制作を発案した一人。16年3月、ホテルを開業した。「映画で十勝を知った旅人の拠点にしたかったんです」。ホテルは5階建て26室。1階は洗練された内装のフロント兼カフェバーだ。音楽ライブなども開き、旅人と地元客が同じ空間で憩う。

 帯広の隣の幕別町出身。大学進学で上京し、東京で飲食店経営に奔走した。帰省の飛行機は必ず窓側に座った。小麦、ジャガイモ、大豆…。十勝平野を彩る美しい模様に癒やされた。

 十勝ゆかりの首都圏在住者が集う交流会で古里への思いを語るうち、帯広出身の弁護士柏尾哲哉さん(51)=東京=たちと「十勝の魅力を発信する映画を作ろう」と決めた。監督は幕別の後輩で東京で活躍する映像作家に託した。農道沿いの畑、客同士が交流する帯広の屋台。27分の映像に十勝の日常の魅力を詰め込んだ。ユーチューブで1週間に約1万回再生された。

 同時に進んだプロジェクトがあった。「帯広のホテル、買っちゃった」。14年春、柏尾さんが12年に閉館した宿を取得した。「人を楽しませる技術がある」と、その運営を打診した相手が坂口さん。「宿泊業は究極のサービス業。やってみたい。十勝が大好きだし」。映画を見て十勝を訪れる人の受け皿になればと即断した。

 2人は運営会社を設立。社長に就いた坂口さんは帯広に拠点を移した。2年かけて十勝らしいぬくもりを感じられるデザインにホテルを改装し、開業にこぎ着けた。

 今夏は客室の稼働率8割の忙しさ。地域にも溶け込んだ。晩秋の昼下がり。カフェバーで地元の白髪の女性2人がオリジナルビールを味わいながら、会話を弾ませていた。「旅行者にも地元の人にも、ここが、みんなのリビングになったらいいな」。坂口さんがほほ笑んだ。


ホテルヌプカ(帯広市西2南10の20の3 電話0155・20・2600、ホームページ https://www.nupka.jp/)の運営会社が発売しているクラフトビール「旅のはじまりのビール」。地元酒店などで販売し、藤丸百貨店(帯広市西2南8 電話0155・24・2101)では1本497円。ヌプカのカフェバー(午前7時~午後11時)ではグラスのみの提供で1杯800円。

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