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<釧路 マリモを未来へ 命名から120年>上 世界遺産へ高まる機運

 オレンジ色の炭酸飲料で割った焼酎の中に、緑色の球が二つ浮かぶ。「レイクサンセット」。夕日に染まる阿寒湖で、国の特別天然記念物のマリモが静かに息づく様子をイメージしたカクテルが誕生した。マリモを模した球は寒天で作った。

■「住民の誇り」

 釧路市阿寒湖温泉の商店主らによる「阿寒湖ご当地ドリンク協議会」が、18日に温泉街で開いたイベントでお披露目した。考案したマリモカクテルは、これで4種類目。会長の藤井貢(みつぐ)さん(44)は熱く語る。「マリモは住民の誇り。観光客にも人気が高く、題材はマリモ以外に考えられない」

 阿寒湖のマリモは、植物学者の川上滝弥(たきや)(1871~1915年)が、札幌農学校(現北大)の学生だった1897年(明治30年)に見つけ、翌年、植物学の専門誌に「毬藻(まりも)」という和名で初めて発表した。1921年(大正10年)に国の天然記念物、52年には特別天然記念物に指定された。

 マリモはもともと糸状の緑藻で、北半球に広く分布する。国内は阿寒湖など20湖沼に生息するが、球状のマリモが群生するのは、現在、世界で阿寒湖だけだ。

 希少な球状マリモが群生する阿寒湖を世界自然遺産に登録しよう―。2012年、釧路市が動き始めた。

 しかし、環境省は15年、国内候補地の選定対象から外す。阿寒湖と周辺の湖沼群が世界で唯一無二の自然環境だとする科学的根拠が不十分だと指摘した。一方で、今後の研究成果次第では復活の可能性も残した。

■登録諦めない

 登録への再挑戦に向け、釧路市教委マリモ研究室長の若菜勇さん(60)は、論文の執筆を急ぐ。来年3月に定年退職が迫っている。

 後に釧路市と合併した旧阿寒町の町教委に91年、国内初のマリモ専門学芸員として採用された。この四半世紀余り、水質の悪化などで減り続けるマリモの生態を解明し、保護や管理方法の確立に力を注いできた。

 保護への道筋は見えてきたが、楽観はできない。だからこそ、登録の重要性を痛感する。「実現すれば、阿寒湖の環境は今より厳しく保全され、マリモを大切にできる」。27年間の取り組みが、マリモの未来を守ることにつながると確信する。

 賛同する市民の輪も広がる。マリモをテーマにしたCD制作やマリモをまねた体操で登録への機運を高めてきた市民グループ「マリモでくしろを盛りあげ隊」会長の浅野一弘さん(53)は力を込める。「登録で地域を活性化させたい。何年かかっても運動を続ける」

 命名から来年で120年。阿寒湖の象徴であり続けたマリモを未来にどうつなぐか。大きな岐路に立つ。(釧路報道部の麻植文佳が担当し、3回連載します)

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