PR
PR

<詩部門>受賞者インタビュー

<本賞>藤田民子さん「少女の家」


 夫と母への思い込め


 「小林東(あずま)との約束のために一本を出港させる」。あとがきにこう記した。

 釧路新聞の記者を経て、18歳で知り合った小林さんと1969年に結婚。それから名物ジャズ喫茶「ジス・イズ」を共に経営してきた。2012年に母親が入院し、夫も脳梗塞で倒れて発語が不自由になった。2人を看(み)るうち、自身も急性骨髄性白血病で伏した。退院後、病床の夫に「前の詩集から14年ぐらいたったので、そろそろ(新詩集を)作ろうかなと言ったら、うんうん、とうなずいてくれた」。亡き母と今年1月に惜しまれて逝った夫への思いを込めた一冊になった。

 詩は10代のころから書いてきた。第2詩集の「ゼリービーンズ岬の鳥たち」が道詩人協会賞を受賞、北海道新聞日曜文芸欄で94年から22年近くにわたって詩の選者を務めた。紛れもなく道内の重鎮詩人の一人だ。それでも応募を思い立ったのは「長年選者を続けて、作品を手に握りしめてポストに投函(とうかん)する人の気持ちに触れた。詩というのはかけがえのないものとして生み出されるんだな、と痛切に感じた」からだ。

 詩作に当たっては「前衛と即興」を旨としてきた。「揺るぎない個があって、しかも飾らず素のままの言葉で書いていく」のが理想で、周囲からは「分かりにくい詩と言われてきた」。それでいいとも思ってきたが、今回は少し心が揺らいだ。詩集前半では、初めて家族や自身の少女時代の経験をモチーフとし、「物語」を意識した。家族同然に暮らしていた犬と並んだ6歳ごろの写真も、控えめな大きさで載せた。

 折り重なるようにやってきた家族の不幸や自らの病を経て「少し優しい気持ちになったのかなあ」と、ぽつり。「仲間たちが(藤田さんの詩には)釧路の風土があるって言うのさ」と笑う。「もっと根源的なものを書きたいと思ってはいるけど、釧路を離れたことがなくて、先輩たちに『好きにやればいい、これでいいよ』って育てられてきたことは、まさしく事実なんです。感謝しています」



<佳作>草野理恵子さん「黄色い木馬/レタス」


 「生きにくさ」に共鳴


 室蘭栄高在学中に詩を書き始め、北海道新聞の日曜文芸欄を手始めに、詩誌に投稿を続けてきた。2014年刊行の第1詩集「パリンプセスト」が横浜詩人会賞などを受賞。今回、佳作を受賞した第2詩集も高く評価された。平易な言葉を選んでいるようで、体の一部が欠落した人などグロテスクな表現も見られる。「生きにくさ」を持つ人に共鳴する。

 次男の耕也さん(23)が幼いころに難治性てんかん(ドラベ症候群)を発症したことが背景にある。「1日に100回も発作が起きる」ほど重い症状と向き合った経験が「意識していなくても、ベースにはなっていると思う」。現在では平日に作業所に通えるようになり、「自慢の息子です」と笑顔を見せる。

 詩集の題は童謡の「きいろい木馬」に想を得た。木馬が折れた足をきこりに付け直してもらう話で、耕也さんが好きな曲という。

 二つの言葉をスラッシュで結んだ題が印象的だ。収載した25編の題も「朝/自動販売機」などと統一。「いろんな読み方ができて、読む人がそれぞれ違う話を想像してもらえるとうれしい」と話す。

 室蘭出身で、名古屋大教授の夫も同郷。父が市立室蘭水族館の職員だったため「3歳から12歳まで水族館内の宿舎に住みました。閉館後に館内で一人遊び自由に空想を広げていた。楽しかった。それが詩の原点なのかも」。横浜市在住。



<佳作>土橋芳美さん「痛みのペンリウク 囚われのアイヌ人骨」


 民族の尊厳書き残す


 平村ペンリウク(1833~1903年)は日高管内平取町のアイヌコタンの首長で、著者の曽祖父の兄。宣教師ジョン・バチェラーとも交流があった人物だ。

 1970年代に仲間と月刊紙「アヌタリアイヌ」を創刊し、民族自立の問題に関心を寄せてきた。「ペンリウクとバチェラーの交流のことを書き残したい」という長年の願いを果たすため、思い立って2016年の初めから文章講座に通った。「一緒に受講する方がスマホで調べ、『北大にペンリウクさんの遺骨があるらしい』と教えてくれた。初めて聞いた話で、ものすごく驚いた」。夏に「平取1号」の名で北大に保管されていた遺骨と対面する。返還を求める中で9月に北大の説明が「別人の可能性がある」と変わり、「心が折れて」寝込んだ。

 本書に収めたのは「そのころ、わき出すように聞こえてきたペンリウクの怒りの声を、泣きながら書き取ったもの。詩と呼ぶのかどうかも、私には分かりません」。周囲が長編叙事詩と認めて応募を強く勧め、結果として評価されたことを「光栄に思う」と話す。

 今は「平取1号」がペンリウクの遺骨かどうか、北大の詳細な調査の結果を待つ。北大のアイヌ納骨堂に並ぶ千体以上の遺骨が「何らかの形で安住できるまで(返還運動に)かかわっていきたい」と決意を新たにする。札幌市在住。

どうしん電子版のご案内
北海道新聞 購読の申し込みはこちらから
新聞配達スタッフ募集
ページの先頭へ戻る