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負の能力

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♪卒業までの半年で、答えを出すと言うけれど♪。往年のヒット曲「青春時代」は、悩みの真っただ中にいる若者たちの心情をこう歌っている。青春時代に限らない。自らを省みても「道に迷っているばかり」だった▼右か左か、マルかバツか。日々の暮らしの中で明確な答えを迫られる場面は少なくない。だが、簡単には出てこない。焦りも生じる▼そこで、こんな考え方はどうか。「ネガティブ・ケイパビリティ(負の能力)」。作家で精神科医でもある帚木蓬生さんの近著(朝日選書)のタイトルである。「どうにも答えの出ない、どうにも対処しようのない事態に耐える能力」「性急に証明や理由を求めずに不確実さや不思議さ、懐疑の中にいることができる能力」だという▼ヒトの脳は、目の前に分からない、あるいは不可思議なものがあると、とりあえず意味づけをして「分かろう」とするそうだ。これでは理解が低い次元にとどまる。ほんの一面を見てレッテルを貼るようなものだ▼対して、「分かった」つもりにならず宙(ちゅう)ぶらりんの状態に耐え抜く。それが対象の本質に深く迫る方法であり、相手を本当に思いやる共感に至る手だて―。帚木さんはネガティブ・ケイパビリティという言葉に出会った時の衝撃を、鮮明に覚えていると記した▼「この道しか、ない」といった決めつけと逆の発想かもしれぬ。道は、いくつもあるはずだ。2017・11・12

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