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7 課題の多いシリアの教育システム

 日本に来てから、講演などで学校を訪れる機会が何度かありました。日本とシリアの教育システムには多くの違いがあることが分かりました。シリアの教育システムには改善するべき点が多くあるように感じています。

 シリアでは1年間で約9カ月、学校に通います。1日の授業時間は5、6時間で「先生の話を聞く」ことがほぼすべてです。化学、物理の授業でも実験はまずやりません。化学などはテストに受かるために、ひたすら記憶する「暗記科目」の象徴です。音楽や美術のような創造的な授業は、ほとんど存在していないかのように簡単に扱われます。

 日本の学校であるようなクラブ活動もありません。体育の授業は、男子はサッカーをすること、女子は散歩をしたり、おしゃべりをしたりするだけです。

 小学校になると、毎朝、子どもたちは軍隊のような制服を着て、ある儀式を行います。すべての生徒が整列し、軍隊式の敬礼をします。

 先生が「アラブ国家を一つに!」と叫ぶと、生徒たちは「(預言者ムハンマドの)永遠の訓(おし)えとともに!」と叫びます(これはシリアの政権与党であるバース党のスローガンです)。

 先生が「我々のゴールは?」と問うと、生徒は「結束! 自由! 社会主義!」。「永遠の指導者は?」(先生)、「バッシャール・アル・アサド(大統領)同志!」(生徒)と叫びます。そして、国歌を聞きながら国旗に敬礼します。この儀式は高校卒業まですべての学年で行われます。

 中学から高校までは、かつて週1回、武器やカラシニコフ銃の使い方を学ぶ軍事の授業もありました(私のときは無くなりました)。

 シリアは宗教に左右されない世俗主義の国のはずですが、イスラム教の授業もあります。ほとんどの学校や大学は政府の公的施設なので、とても安い授業料で通うことが出来ます。(公務員である)教師たちは、生徒たちにアサド大統領に従うように教えていました。

 鈴木さんという日本人の友人がいます。内戦が始まる前に、子どもたちにバドミントンを教えるため、JICA(国際協力機構)の事業でアレッポに派遣されていました。

 彼によると、シリアの子供と日本人の子供は随分と違いがあるように感じていたようです。シリアの子供はトレーニングではベストを尽くしますが、試合に負けたら、誰かに責任転嫁したり、相手をののしり始めたりしたそうです。また、しばしばミーティングに遅れてきたそうです。「僕には信じられないよ」と言っていました。自分の方が上手いと思っているのか、年下の子供とは練習をしたがらなかったそうです。先生についても、「いつも生徒をたたくための棒を持ち歩いていた」と怒っていました。

 内戦が始まってからは、さらに教育の状況は変わりました。例えば、政府の支配地域では、アサド政権に味方しているロシアへ敬意を表すため、ロシア語の授業を新たに始めることが決まりました。

 過激派組織「イスラム国」(IS)支配地域では、男子だけの教育が行われました。ISは独自の教育システムを作る計画を立て、音楽や美術、社会、歴史、スポーツ、哲学、心理学、キリスト教といった科目を排除しました。テロ行為や戦闘を行う意味を無理やり教え、子どもたちの心に過激な思想を植え付けました。囚人の斬首や拷問を見ることを強制しました。

 難民となってしまったシリアの子供たちは、ごくわずかしか学校に行けていません。国連は5月、210万人のシリアの子供が教育を受けていないと発表しました。5つに1つの学校が攻撃を受けたか、学校が行き場のない人々の避難所になっており、教育機関として機能していないようです。

 このような状況で国を再建するのは、とても困難なことです。長い道のりになると思います。(原文は英語)


アスィー・アルガザリ 1992年、シリアの首都ダマスカス近郊のダルアーで生まれる。内戦が始まり、2014年1月に姉夫婦が住むサウジアラビアに、両親らと脱出。その後、インターネットの交流サイトで道内在住の女性と知り合い、結婚を決意する。15年に来日して結婚後、配偶者ビザを取得して道内で暮らし始めた。1年半で日本語を習得し、現在は札幌市内で妻と2人で暮らす。(どうしん電子版のオリジナル記事です。随時掲載します)

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