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<八雲 木彫りの熊の里>上 ブーム再来、町民講座復活

 北海道土産として1950~70年代にブームとなった木彫り熊が近年、工芸や土産品として再び脚光を浴びている。渡島管内八雲町は旭川とともに、木彫り熊の発祥地として知られる。

■10~90代夢中

 「八雲の木彫り熊は毛並みが肩から菊の花びらのように広がる。根気のいる細かい作業ですが削りすぎず、自然な流れを意識して」

 10月の週末、町の木彫り熊資料館。町民対象の木彫り熊講座で、講師の千代(ちよ)昇さん(83)が木彫り熊の仕上げの工程「毛立て彫り」の技を教えていた。

 本年度の受講生は高校1年生から92歳までの男女12人。半年間、シナノキ材と向き合い、型紙のデザインに沿って「粗彫り」「中彫り」「仕上げ彫り」を経て、毛立てに至った。

 「あごの下など狭い部分を削るのが大変だったが、満足の出来」と今年初めて参加した公務員の堀口円さん(34)。また、岡柚芽子(ゆめこ)さん(27)は「こんなにきれいにできて感激。苦労したかいがあった」と話した。

 八雲の木彫り熊は、八雲を開拓した尾張徳川家の第19代当主・義親(よしちか)が23年(大正12年)、旅行先のスイスから持ち帰った木彫り熊の土産にヒントを得て、農閑期の副収入として農業者に制作を勧めたのが最初。その後、農民美術運動として広がった。

 講座は、町公民館主催の講座として71年開講。講師の高齢化や、受講者の減少で、14年前に途絶えたが、4年前に再開した。歴代4代目講師を引き受けたのが、かつて講座で技術を身に付けた千代さんだった。

 本年度の受講生たちの作品約30点は10月最後の週末、町文化祭会場に並べられた。うつむき加減に歩く「這(は)い熊」。牙をむく「吠(ほ)え熊」。八雲の木彫り熊の意匠は、サケをくわえず、顔つきに愛嬌(あいきょう)がある。

 講座再開の初年度は専用の道具が十分にそろわず、文化祭出展に至らなかった。千代さんは「これだけ並ぶと実に壮観。皆さん本当に頑張った」と感慨を深めた。八雲高1年の大竹七未さん(16)は「かわいらしい表情を出せた」と自分を褒めつつ「毛の流れをもっと細かく表現したい」と2作目に取りかかった。

■伝統絶やすな

 北海道の木彫り熊は高度成長期を経て、大量生産による粗製乱造が相次ぎ、急速に廃れた。だが近年「伝統を絶やすな」との機運が高まり、八雲をはじめ、道内各地で展覧会が開かれている。海外観光客の人気も高い。

 八雲の木彫り熊講座は、経済産業省の2016年版「ものづくり白書」で伝統を後世に引き継ぐ活動として紹介された。八雲の市街地では店先に木彫り熊を飾り、まちづくりに生かそうという試みも始まった。(八雲支局の斉藤高広が担当し、3回連載します)

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