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朴教授逆転有罪 韓国の「自由」はどこへ

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 韓国における学問の自由を侵す判決だと言わざるを得ない。

 従軍慰安婦問題に関する著書が元慰安婦らの名誉を傷つけたとして名誉毀損(きそん)罪に問われた朴裕河(パクユハ)・世宗大教授の控訴審で、ソウル高裁は一審の無罪判決を破棄し罰金刑の有罪判決を言い渡した。

 慰安婦のいわゆる強制性の有無に関し、自発的に慰安婦になった人もいたとする記述が虚偽事実だと指摘し、名誉毀損を認定した。

 歴史的事実の検証は学問や言論の世界で行われるべきだ。学者の研究内容に司法権力が立ち入れば、民主主義社会の基盤である自由な言論は萎縮してしまう。

 著書「帝国の慰安婦」は、帝国主義や女性・民族差別、貧困など慰安婦を生んだ時代背景や構造的要因に言及し、問題を普遍的に捉えるべきだと論じたものだ。

 慰安所の運営業者には朝鮮人もいたと指摘し、日本兵と慰安婦が時に「同志的関係」にあったとの見方を示した。「日本に強制動員された性奴隷」といった韓国の一般的な認識とは一線を画した。

 これが元慰安婦や支援団体の反発を招き、検察の起訴に至った。

 一審判決は、著書は元慰安婦らを特定しておらず名誉毀損には当たらないとしたが、高裁判決は元慰安婦と名乗り出た存命の女性は少ない点を挙げ、判断を覆した。

 「過度の刑事罰によって、学問ないし表現の自由が萎縮してはいけない」ので、懲役刑ではなく罰金刑にとどめたという。いずれも納得できない理由だ。

 こんな論法で有罪とするなら表現、学問の自由は守られまい。

 朝鮮人慰安婦の実態に関し論争があるのは事実だろう。だからこそ史実解明の営みが続いている。その中で、韓国世論に一石を投じた朴氏の真意に思いをはせたい。

 朴氏は2015年に掲載された本紙のインタビューに「全体像をありのままに見て議論の地平を共有し、両国民の何らかの合意を導き出したい」と述べている。

 決して日本を免罪しているわけではなく、歴史の客観的な評価によって日韓の真の和解に資することを目指したのだろう。高裁判決はそこも考慮していない。

 慰安婦問題を巡る日韓合意に批判的だった文在寅(ムンジェイン)氏が大統領になり、合意に基づく和解のプロセスは止まっている。今回の司法判断の背景に、そうした韓国の政治情勢もあるとしたら見過ごせない。

 歴史に謙虚に向き合い、未来志向の関係を築いていけるよう日韓両政府の一層の努力を求める。

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