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中国 進む都市化、激化する都市間競争(1)

富士通総研経済研究所上級研究員 趙 瑋琳

■都市部の人口57%

 中国では1978年の「改革・開放」以降の経済成長に伴って、6億超の人びとが仕事やより良い生活を求めて農村地域から都市部に移動し、都市部は目覚しい経済発展を遂げた。中国国家統計局が発表した「2016年国民経済と社会発展統計公報」によると、2016年末時点の中国の都市部の常住人口は約7億9,000万人となり、都市化率(総人口に占める都市部常住人口の割合)は57.3%に達した。

 国際連合は、2050年までに中国では新たに3億人が都市部に住むとの見通しを出している(「世界都市化白書2014」)。近年、中国の都市化率は年間1%超のペースで上昇しているため、都市部への新たな移住者が3億人になるのは2050年より早まると予想される。

図 中国における都市化率と非農業戸籍率の推移(1978年-2016年) ※注 非農業戸籍率 = 非農業戸籍の人口数 / 総人口; 農業戸籍率 = 農業戸籍の人口数 / 総人口 ※中国統計年鑑とCEICデータベースを基に作成
図 中国における都市化率と非農業戸籍率の推移(1978年-2016年) ※注 非農業戸籍率 = 非農業戸籍の人口数 / 総人口; 農業戸籍率 = 農業戸籍の人口数 / 総人口 ※中国統計年鑑とCEICデータベースを基に作成

■農村との格差が深刻化

 一方、投資主導の経済成長の裏には都市部と農村部の格差拡大、環境破壊や社会保障整備の遅れといった社会問題が深刻になっている。また、中国では「農業」と「非農業」に分かれる独特な戸籍制度が存在するため、非農業戸籍で都市化率(非農業戸籍率)を見た場合、2016年は41.2%となっている(図)。ここ数年、非農業戸籍率と都市部常住人口の都市化率とのギャップが縮小しているものの、依然として2桁の差があるため、戸籍制度の改革を加速させることが喫緊の課題となっている。

 近年中国政府は、都市部と農村部の格差を縮小させ、都市化による内需拡大を新たな成長エンジンと位置付け、従来と異なる新しい形の都市化(中国語では「新型都市化」)を目指している。具体的には、第一に、戸籍制度や社会保障制度の改革に力を入れ、ハコモノの都市開発より、都市部の常住者や新たに都市に流入する人びとが安心して暮らせる都市づくりである。第二に、資源を合理的に利用し、環境に配慮した住みやすい都市づくりである。このような方針の下に都市化を進めていけば、都市の持続的発展が可能になると思われる。

中国まるごと百科事典(http://www.allchinainfo.com)の地図をベースに作成
中国まるごと百科事典(http://www.allchinainfo.com)の地図をベースに作成

■地域発展の二極化

 旧正月前後に、里帰りのために発生する人口大移動が毎年話題になっており、2017年旧正月期間中(1月27日から2月2日)には、3億6,000万人相当の移動があったと報じられている。この時期の人口流出の多い都市(上位10都市)は深セン(広東省)、東莞(広東省)、中山(広東省)、佛山(広東省)、広州(広東省)、北京、アモイ(福建省)、蘇州(江蘇省)、上海、杭州(浙江省)であるが、これらは比較的経済発展している地域の都市である(表)。

表 主要地域の一人当たりGDP(元)の変化 ※ 中国統計年鑑(2017)を基に作成(1元=16円に換算)
表 主要地域の一人当たりGDP(元)の変化 ※ 中国統計年鑑(2017)を基に作成(1元=16円に換算)

 地域の発展には栄枯盛衰がつきものといわれている。とりわけ、人口の流入、流出で地域は繁栄したり衰退したりするため、地域の発展は人口動態との関係が深い。人口の増加は通常、出生数が多くなる自然増加と、人口流出より人口流入が多い社会増加の二つのパターンがある。中国でも日本と同様に少子高齢化の進展で、自然増加が難しく、各地域では社会増加に大いに期待している。

 しかし、地域間の経済発展のアンバランスが是正されない限り、人口流入と人口流出の二極化が進み、経済発展の良い地域には人口が流入し、経済発展が遅れている地域では人口流出が起きている。これまで中国の内陸部の都市では、都市化を進めようとしても、人口流入がないため、結局ゴーストタウンのようなハコモノだけの都市になってしまったケースがある。(2へ続く)

ちょう・いーりん 中国遼寧省出身。2002年大連海事大学卒、2008年東工大院社会理工学研究科修了、博士(学術)。早大商学学術院総合研究所を経て、2012年より現職。麗澤大オープンカレッジ講師なども兼任。
ちょう・いーりん 中国遼寧省出身。2002年大連海事大学卒、2008年東工大院社会理工学研究科修了、博士(学術)。早大商学学術院総合研究所を経て、2012年より現職。麗澤大オープンカレッジ講師なども兼任。


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