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<書評>町を住みこなす

大月敏雄著

超高齢化 地域のあるべき姿
評 古田隆彦(現代社会研究所長)

 人口増加・経済成長時代の1973年、ある建築家が提案した「現代住宅双六(すごろく)」は、34年後の2007年「新・住宅双六」に変わってしまった。

 前者では、右下の胎内を振り出しに、アパート、分譲マンションなどを経て、真ん中の「郊外庭付き一戸建住宅」で「上がり」。ところが、後者では中央から振り出して、放射状に6方向へ向かう。一番外側の「上がり」は、老人介護ホーム、親子互助マンション、外国定住、都心の超高層マンションなどだ。

 二つの双六の間に起きた社会的な大変化は、人の寿命が延びたこと、つまり「郊外庭つき一戸建て」の先に、高齢者の終の住処(すみか)という、新たな課題が浮かび出たことだ、と著者はいう。

 この変化に、住宅産業や公的機関は対応できていない。住宅企業の多くは、投資の高利回りを求めて、一度に同型の住宅を大量供給しているし、自治体や公社も、住宅政策がしばしば経済政策のテコ入れに利用されるため、時の政権の風向き次第でクルクルと変わる。

 そこで、本書では「時間」「家族」「引越し」「居場所」という四つの観点から豊富な事例をあげて、住居から町までの“住みこなし”現象をひも解き、町を作り変えるヒントを示す。

 超高齢社会にふさわしい地域包括システムに見合うのは「可能な限り住み慣れた地域で、自分らしい暮らしを人生の最期まで続けることができる」町だ。

 永い人生で刻々と変わるニーズに応じ、ハードでは戸建から賃貸アパートまで、さまざまな住宅へ循環的に引っ越しができる。またソフトでは家族支援、地域互助、公的支援を使いこなしつつ、「住み慣れた地域」に住み続けられる。これを作り上げるには、一つ一つの建物を超えて、「住みこなせる町」そのものを目標にすべきだ、という。

 人生百歳時代には、たどり方、連れあい方、しまい方も大きく変わる。町とは「住みこなす」ものか「住み捨てる」ものか、供給サイドはもとより、居住者自身が問われることになろう。(岩波新書 929円)

<略歴>
おおつき・としお 1967年、福岡県生まれ。東大大学院教授。専門は建築計画、住宅政策など

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