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6 社会保障 「全世代型」 道筋見えず

 安倍晋三首相は2012年12月に政権の座に返り咲いて以降、「待機児童ゼロ」「介護離職ゼロ」など社会保障分野でさまざまな政策を打ち出してきた。だが当初の達成期限を先送りにするなど成果が見えない政策も多い。今回の衆院選でも「全世代型社会保障」への転換という聞こえの良いキーワードを掲げているが、具体的な道筋は示していない。憲法改正やアベノミクスに比べ、首相の社会保障に対する冷めた姿勢が透けて見える。(東京報道 丸山格史、中沢弘一、金勝広)

■財源・人手不足 解消遠く

 首相は9月25日の記者会見で消費税の使途見直しを争点に掲げ、19年10月の消費税率10%への引き上げによる増収分5兆円超のうち、2兆円規模を幼児教育・保育の無償化など子育て支援充実に充てる方針を示した。高齢者に偏りがちだった社会保障政策を子育て世代も含めた「全世代型」に切り替えることを強調したが「政策パッケージは年内に取りまとめる」(菅義偉官房長官)として具体案は示していない。

 これまでも選挙戦のたび、首相は有権者に魅力的な社会保障政策を発信してきた。9月25日の会見でも「待機児童解消を目指す決意は揺らがない」と訴え、6月に策定した子育て安心プランを2年間前倒しして、20年度までに保育の受け皿32万人分の整備を進めると語った。

 しかし待機児童解消はそもそも13年に第2次安倍政権が打ち出した「待機児童解消加速化プラン」で掲げた政策。17年度末までに待機児童ゼロを達成するとして、これまで5年間で約53万人分の受け皿整備を進めてきた。だが政府の想定以上に働く女性が増え、待機児童数が3年連続で増加したことから、首相は今年5月に目標達成を3年間先延ばしした上で、22年度末までにさらに10万人分を上乗せして計32万人分の受け皿を整備する方針に転換していた。

 首相が今回見直したばかりの計画の再変更に言及した背景には、幼児教育・保育の無償化が実現すれば、保育需要の高まりに拍車がかかることが予想され、受け皿整備を急ぐ必要があるからだ。しかし待機児童が多い都市部では保育士不足や保育所をつくる場所の確保が深刻な状況で、厚生労働省内からは「きちんと計画を立てた上で発言しているのか」と、首相の場当たり的な対応に疑問の声も聞かれる。

 介護についても同様だ。首相は20年代初頭までに50万人分の施設・在宅サービスを整備すると繰り返し主張。15年にはアベノミクスの「新3本の矢」の一つに「介護離職ゼロ」を掲げ、昨年6月には「1億総活躍プラン」で介護職員の処遇改善に向けた賃金制度の導入を盛り込んだが、介護現場の人手不足は深刻なままだ。

 厚労省所管の公益財団法人「介護労働安定センター」の調査では、15年10月から1年間に全国の介護職員の16・7%が退職。理由として「人手が足りない」「仕事内容の割に賃金が低い」などを挙げた。厚労省は20年代初頭までに約25万人の介護人材の確保を目指すが「状況は非常に厳しい」という。

 高齢化が進む中、社会保障費は自然増を続けている。政府は財政健全化に向け、16~18年度予算で社会保障費の増加額を年5千億円程度に抑制することを決め、今年8月からは医療・介護保険制度の一部を見直し、一定の所得がある人の負担額を引き上げるなど高齢者、現役世代に負担増も求めている。専門家は「介護職員の平均年収は300万円ほど。他職種と比べ100万円前後低いため、なり手は少ない。介護の受け皿整備を本気で行うのであれば、社会保障費から必要額をきちんと支出するべきだ」と指摘する。

 政府は昨年12月に年金制度改革関連法を成立させ、少子高齢化の進展に合わせ、支給水準の伸びを抑える「マクロ経済スライド」を18年度から強化することを決めた。21年度からは賃金や物価の変動に支給額を合わせる「賃金・物価スライド」も導入する。政府は「将来世代の給付水準確保のため」と強調するが、少子高齢化が進む中で長期的に給付水準が低くなることを止められるわけではない。

 臨時国会の焦点だった働き方改革関連法案も、衆院解散により審議は先延ばしされた。残業時間の上限規制や非正規労働者の待遇改善については労働団体からも一定の評価を受けていたが、法案提出は年明けの通常国会にずれ込む見通し。政府は19年4月の施行を目指しているが、労使間の調整や会社側の準備が間に合うのか懸念される。

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