PR
PR

シカの線路侵入、鉄分与えて防げ 道内で実験

 シカと列車の衝突事故は、シカが鉄分を求めてレールをなめに来るために起きる―。こうした発見に基づく事故対策を、建材総合メーカー・日鉄住金建材(東京)が進めている。鉄分を含んだブロックを山中に置いてシカを引き寄せ、鉄道用地に入り込むことを防ぐ。

 「ああ、なめに来ている」。富良野市内の森林。監視カメラのデータには、実験用に設置したブロックをなめるエゾシカたちが捉えられていた。地面にはおびただしいシカのふんと足跡。「集団で来ていますね」と同社の梶村典彦開発企画部長(48)はいう。シカがなめていたのは梶村さんらが開発した鉄分入り誘鹿材(ゆうろくざい)「ユクル」だ。

 シカが列車にはねられ、鉄道会社が困っている―との新聞記事を読んで、2011年から研究を始めた。当時、鉄道各社はライオンのふん尿をまいたり、高い柵で鉄道用地を囲ったりしていた。しかし、いずれも対症療法で、そもそもシカがなぜ線路に入り込むかはよく分かっていなかった。

 そこで梶村さんらはシカの行動研究を始めた。監視カメラを仕掛けると、不思議な行動が分かった。シカたちは夜、餌を食べた後に線路に入り、10~20分して引き返す。いったい何をしているのか。

 「シカなどの草食動物は土壌からミネラルを摂取すると聞いたので、シカがレールから鉄分を取っているとの仮説を立てました」。地面に鉄粉をまいたら、くぼみができるほど土を食べた。線路そばにカメラを仕掛けると、レールをなめる姿が写った。

 鉄分を十分に与えて満足させればシカは線路に入らないのではないか。そう考えて、試行錯誤の末、完成したのがユクル。鉄分とミネラル分を固め、シカを引き寄せる。雨でも溶けにくく、シカがなめてもすぐにはなくならないよう工夫した。名前は、アイヌ語でシカを指す「ユク」と「来る」を合わせて付けた。

 道外の鉄道会社では線路の近くに置くなどして使われ始めているが、道内ではまだ。梶村さんらは富良野、釧路市阿寒など道内で実験を繰り返し、エゾシカ対策に役立てたいという。

 シカなど偶蹄(ぐうてい)類の食性に詳しい林田まき東京農大短期大学部准教授は「大変興味深い研究。シカ肉は牛肉などに比べて鉄分が多い。なぜなのかは良く分かっていないが、当然それだけの鉄を摂取することが必要。シカが誘鹿材の鉄分にひかれて行動することは十分考えられる」と話している。

 ユクルは1個5千円(送料は別)。(編集委員 橘井潤)

残り:375文字/全文:1384文字
全文はログインまたはお申し込みするとお読みいただけます。
このジャンルの最新記事

現在このジャンルの記事はありません

どうしん電子版のご案内
北海道新聞 購読の申し込みはこちらから
道新おためし読みアンケート
ページの先頭へ戻る