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大義なき解散、首相賭け 改憲より政権維持優先 野党「加計・森友封じ」と批判

 安倍晋三首相が28日召集予定の臨時国会で衆院解散に踏み切る意向を固め、与野党は今年最大の政治決戦となる総選挙に向けて臨戦態勢に入った。内閣支持率の回復基調や民進党内の混乱を踏まえ、首相が早期解散の判断に傾いた形だが、結果次第で宿願の憲法改正や来年秋に控える自民党総裁選での自身の3選戦略が揺らぐリスクをはらむ。野党側が「加計(かけ)学園や森友学園問題の追及を封じるための大義なき解散だ」と一斉に批判する中、首相は政権の消長を左右する大きな賭けに出る。


 「断定はできないが、臨時国会冒頭にも解散したいと思っている」。複数の政府・与党関係者によると、首相は今月中旬に周囲にこう語り、北朝鮮情勢も考慮しながら、近く衆院解散・総選挙に踏み切る意向を示した。首相は11日に関係部局に全国各小選挙区の情勢分析を進めるよう指示。選挙向けの経済対策のとりまとめも急ぐ方針だ。

 安倍政権内では当初、来年秋の自民党総裁選で首相が3選を果たした後、解散を打つのが「最適なシナリオ」(政府高官)との見方が大勢だった。加計学園問題などに対する世論の批判を鎮める「冷却期間」を確保でき、総裁選後は内閣支持率が上昇する傾向も強いからだ。首相自身も改憲に前向きな勢力が国会発議に必要な3分の2以上の議席を確保する政治状況を失うリスクから、早期解散に慎重な姿勢を示していた。

 にもかかわらず首相が早期解散に踏み切るのは、森友学園の国有地取得に関する会計検査院の調査報告や、加計学園の獣医学部新設の認可判断が近く公表される見通しであることを踏まえ「臨時国会で問題が再燃する前に早く解散した方が得策」(与党幹部)と判断したためだ。8月の内閣改造後は復調傾向にあった内閣支持率が再び下落に転じ、解散時機を失うことを恐れたからでもあった。

 「時間がたてば体制が整う」。首相は17日夜の自民党の塩谷立選対委員長と会談で、小池百合子東京都知事に近い若狭勝衆院議員らが結成を急ぐ新党への警戒心をあらわにした。「小池新党」や離党者が相次ぐ民進党の体制が整う前に選挙を仕掛けることで、政府関係者は「少なくとも自民、公明両党で過半数の議席を確保維持できる」と分析。首相周辺は「改憲よりも、少しでも負け幅を減らして政権を維持することを優先した」と打ち明けた。

 こうした状況を受け、民進、自由、社民の3党は臨時国会での統一会派結成に向けて17日に予定していた党首会談を中止した。民進党の前原誠司代表は同日、党本部で記者団に北朝鮮情勢を踏まえ「政治空白をつくるつもりなのかと驚きを禁じ得ない」と指摘。共産党幹部も「森友・加計問題に触れられたくない首相の個利個略だ」と批判した。

 ただ野党の準備不足を突く、首相の解散判断が奏功するかは見通せない。政府・与党内には政権の本格的な立て直しにはなお時間を要するとの見方が強く、選挙基盤の弱い若手議員を中心に自民党は30~50議席減らすとの観測もある。自民党選対関係者は「経済政策で成果を得てから解散すべきだった」と主張。公明党関係者は「どう考えても解散の大義がない。世論の批判は免れない」と話す。

 改憲勢力が3分の2の議席を割り込めば、首相が目標に掲げる2020年の改正憲法施行はより困難となる。首相は選挙後に公明党や日本維新の会、「小池新党」も含めた新たな勢力で発議を目指すとみられるが、支持層の保守系団体などから「自ら『3分の2』を手放した」との批判にさらされる可能性もある。

 議席の減り幅次第では、自民党総裁選で連続3選を狙う首相のシナリオにも黄信号がともる。首相の総裁任期が来年9月に切れるのを待たずに、党内で早々に「安倍降ろし」が始まりかねない。首相周辺は漏らす。「本当に選挙に突き進んでいいのか、正直怖い」(東京報道 上家敬史、西依一憲)

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