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飯山のいる風景 「裏切らない男」が持つ深み<大藤 晋司>

 今まで当たり前だと思って見ていた景色が、そこにない。という現実を受け止め、その景色の中にいた男・飯山裕志選手について、今回は書きます。

 1997年晩秋。ドラフト4位で指名された飯山選手の鹿児島県の自宅を、ファイターズの担当スカウトが訪れました。「(飯山選手が)小さなころから野球には厳しかった」という父・久志さんが同席し、指名理由や今後の育成方針を静かに聞いた後、傍らの息子について、こう話したそうです。

 「日本ハムさんに息子をお預けします。プロ野球の世界は見当もつきませんので、息子がどうなるか、私には分かりません。ただ、これだけは言えます。こいつは、裏切りません」

 裏切らない。そこには二つの意味があると、久志さんは続けました。一つは、周りの人を裏切らない。チームメートや指導者、自分に関わる人たちに誠実に向き合うという意味。そしてもう一つは、自分を裏切らないということでした。

 「こいつは、『自分でやる』と決めたことは、誰かが見ているかどうか関係なく、必ずやりきります。自分に嘘(うそ)をついて手を抜くようなことは、せん男です」

 スカウトの方はこの言葉を聞き「この子はプロでやっていけるのでは」と思ったそうです。

 鎌ケ谷で汗にまみれ、5年目で一軍初出場し、その後、鍛えぬいた守備力で「守りのクローザー」という稀有(けう)な地位を確立。15年目の2012年、日本シリーズでサヨナラ安打を放ったとき、「この一本を打つために、あいつが今までどれだけバットを振ってきたか、それが報われた」と栗山監督は称賛しました。「(大谷)翔平以上に、代わりがいない選手」と評したこともあります。それらすべてが、「裏切らない」野球人生の証しです。

 緊迫した試合の大詰め、飯山選手がいつもグラウンドにいる。そのたびに「裏切らない」という言葉が思い浮かぶ。これが私には長らくの「当たり前の景色」であり、野球の、そして人生の深みを味わう大切なひとときでもありました。

 若手の育成を重視する方針の下、9月1日に出場登録を抹消され、その景色はありません。それはチームの将来のために必要なことだとは理解しているつもりですが、まだ彼のいる景色が見たい―、という気持ちも抑えきれません。

 と同時に願うのです。ファイターズが目指す育成が、飯山選手のような「裏切らない」野球人を、今後も育み続けるものであることを。(大藤 晋司・テレビ北海道アナウンサー)

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