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アイヌ民族遺骨 返還の流れを強めたい

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 海外に持ち出されたアイヌ民族の遺骨返還に道を開いた歴史的な一歩と評価したい。

 明治初期に札幌市内で盗掘されたアイヌ民族の遺骨1体が、138年ぶりにドイツから日本に返還された。外交ルートを通じて公式に返還される初の事例である。

 ただ、アイヌ民族の遺骨を保管する国は、少なくとも8カ国あると言われる。その実態が詳細に把握されたとは言い難い。

 政府は、遺骨の本来の所在地や、海外流出に至った経緯などを早急に調査する必要がある。その上で、返還の流れを一層加速させる努力を重ねてもらいたい。

 返還された遺骨は、ドイツの民間学術団体が保管してきた。

 当時の学術誌などから、1879年(明治12年)、ドイツの旅行者が札幌市内の墓から持ち出した遺骨と判明した。

 返還を決めた理由について、学術団体の代表は「倫理的な一線を越えていた」と述べた。盗掘は人権侵害であり、返還は当然だ。

 オーストラリア政府も、博物館が保管するアイヌ民族の遺骨3体を返還する意向を示している。

 このほか、ドイツにはさらに14体が残り、米国や英国の研究機関でも保管されている。チェコ、スイス、ハンガリー、ロシアにも存在する可能性が高い。

 今回、ドイツには盗掘の記録があり、「収集経緯が不当であれば返還する」との団体の指針に基づき、条件付きで返還に応じた。

 しかし、国連の「先住民族の権利に関する宣言」(2007年)は「遺骨の返還を求める権利」を明記している。この原則に沿って解決を図るべきだろう。

 北海道アイヌ協会の加藤忠理事長は「名誉と尊厳を回復し、北海道の空気に触れさせて、イチャルパ(供養儀式)をしてあげたい」と語った。関係国はこの思いを重く受け止めてほしい。

 一方、国内の大学や博物館が収集・保管する遺骨は、計約1700体に上る。

 返還先が見つからない遺骨について、政府は、胆振管内白老町に20年にできる「民族共生象徴空間」の慰霊施設に集約する方針だ。

 だが、遺骨は、元の埋葬地に戻すのが筋である。

 政府は、まず遺骨の出身地域や子孫を特定するための調査に力を尽くさなければならない。

 返還を求める真摯(しんし)な話し合いを関係国と続けると同時に、遺骨を納得して受け入れる国内の環境づくりも求められる。

※「イチャルパ」の「ル」は小さい字

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