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海外の遺骨返還、道開く 独から1体、アイヌ協会「歴史的」 拡大への鍵、まず実態把握

 アイヌ民族の遺骨がドイツから返還され、明治期以降に海外に渡った遺骨の返還が初めて実現した。早期返還を求めてきた北海道アイヌ協会は「歴史的な一歩」と歓迎するとともに、ドイツに残る14体や他国に保管されている遺骨のさらなる返還につながることに期待感を高めた。ただ、海外の遺骨の実態把握は遅れており、政府は今後、外交ルートを通じて情報収集と返還手続きを進めたい考えだ。

 「遺骨は138年間、どんな思いでいたのか。名誉と尊厳を回復し、北海道の空気に触れさせて、イチャパ(供養儀式)をしてあげたい」。ベルリンでの返還式後、取材に応じた北海道アイヌ協会の加藤忠理事長は、ドイツで1世紀以上眠っていた先祖に思いをはせ、涙が止まらなかった。

 加藤理事長は返還に尽力した関係者の協力に「感謝しかない」と述べた上で「世界のみなさんには過去の反省の上に立って、返還手続きに踏み込んでもらえればありがたい」と呼び掛けた。

 2007年に採択された先住民族の権利に関する国連宣言に「遺骨の返還」が盛り込まれて以降、国際的に返還の機運が高まった。英国やドイツは、オーストラリアに先住民族アボリジニの遺骨を順次返還。今年6月には、オーストラリアの駐日大使が北海道アイヌ協会に対し、博物館が保管するアイヌ民族の遺骨3体を返還する意向を伝えた。

 今後、海外からの遺骨返還は広がる見通しだが、各国の事情が絡み一筋縄ではいかない側面もある。

 今回ドイツから返還された遺骨は、盗掘の記録が残っており、保管していた民間学術団体が「収集経緯が不当であれば返還する」という団体のガイドラインに沿って返還を進めた。内閣官房アイヌ総合政策室は「逆に収集経緯の不当性を証明できない場合は返還は難しい」とみており、ドイツに残る14体が返還されるかは現時点で不透明だ。

 ドイツ以外の国の実態把握は進んでいない。これまで北海道新聞の取材で、米国や英国の研究機関に遺骨が保管されていることが確実視されている。北大アイヌ・先住民研究センターの加藤博文教授によると、20世紀前半の資料などからチェコ、スイス、ハンガリー、ロシアに保管されている可能性も高いという。

 政府は加藤教授の協力を得ながら、外交ルートを通じて各国の調査を進める考えだ。ただ、各国が返還に協力的に応じてくれるかは見通せない。専門家によると、遺骨返還への対応は国によって異なるため、政府は各国の情報を収集した上で、今秋にも海外からの遺骨返還に向けたガイドラインの検討に着手する。(ベルリン 舟崎雅人、報道センター 村田亮)

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