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読書嫌いが書いた本

読書嫌いが書いた本

 小学校3年生の秋の終わりころだったと思う。重そうな箱を抱えて父が帰ってきた。ふたを開けると、揃いの背表紙の本が隙間なく整然と並んでいた。

 図書室が好きで、エジソンやヘレンケラーのような偉人ものを一冊読み終えては新しい一冊を借りていた。借りては返すリズムも楽しいし、貸し出しカードに自分の名前をひとつづつ書き込んでいくのもうれしかった。そんな様子を好ましく思ったのか、父が先回りして選んだ本は「少年少女の世界偉人伝~全30巻」。すっきりと取り澄ました装幀。それまで読んでいた表紙に絵や挿絵がある「子ども」向けでなく、1巻ごとに「はじめて空を飛ぶことに挑戦した人」や「医学に貢献した人」というテーマで4人の偉人の話がぎゅ~っと詰っていた。文字もぐっと小さい。親心を裏切らないようにと高過ぎる山に挑めど読み進めず、「読んだか?」と聞かれるのが苦痛で、それ以来すっかり本嫌いになってしまった。

 そんなわたしが本を書いた。北海道新聞生活面で連載を担当した「キラリ!見つけた」で道内各地の食の生産者や地域の取り組みに関わる人たちを訪ねた4年半。イラストの数は223枚になった。オリジナリティ溢れるキラリ人たちとの出会いなしでは描けなかった絵を古新聞とともになかったことにしたくない。そんな独りよがりな気持ちもあり、「本にまとめてみよう」という甘いささやきに飛びついた。

 けれど、書くことの難しさを思い知ることになる。「記事のような紹介文ではなく、その場に立った小世里さんだからこそ感じたことを書いて下さい」と言う編集者。そして慣れない表現に苦しんだ半年。  

 「江差のニシンの栄華よ再び」と立ち上がった人、「究極のトマトジュース」作りに真摯に向き合う生産者、利用されない斜面の笹薮の原野を切り拓き自然に負荷をかけずに生きようとするチーズのフェルミエ一家など、20の出会いを見つめ直した。

 北海道の未来に心豊かな可能性を感じさせてくれる、素晴らしい人たちに会えたことが宝物になった。「小世里のキラリ!見つけ旅」を7月12日に発売していただきます。どうぞよろしくお願いします。

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