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卓上四季

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新幹線50年

随筆家の内田百〓(ひゃっけん)は、列車に乗ることが趣味の「乗り鉄」の草分けと呼ばれる。東海道新幹線のビュッフェでの感想がふるっている。<あれは単なるカレーライスではない。二百キロで走っているカレーを百二十円で食べられるのだから安い>(山口瞳著「酒呑(の)みの自己弁護」ちくま文庫)▼乗車したのは1960年代後半か。新幹線の食事は一般より高めと言われた時代である。ひょうひょうとしたユーモアが持ち味の百〓もその速度に脱帽したようだ▼東海道新幹線が開業してきょうで50年。当初210キロだった最高速度は半世紀かけて285キロになる。北海道新幹線も東京から「4時間の壁」に挑戦する。速さを求めるのが新幹線の宿命だろうが、他の鉄道も単なる“高速移動装置”に徹する必要はない▼政治学者の原武史さんは、「鉄道の利便さが演歌を衰退させた」と、女性週刊誌で語っていた。時代とともにトンネルが増え、停車駅も減った。4人がけの席が減り、駅弁を広げるのもままならない。当然ながら、車窓を通して見る季節感や、人との交わりも薄れる▼石川さゆりさんの「津軽海峡・冬景色」も、もはやその雰囲気を追体験できない。情をうたう演歌の世界を共有するのは難しくなっているのが現実だ▼利便さだけでは味気ない。「旅情」もお供できないものか。車中で昼酒をあおっていた百〓も存命ならば、そう思うだろう。2014・10・1

※〓は「門がまえ」に「月」

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