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卓上四季

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闘うムーミン

針葉樹の森に小川が流れ、切り立った「おさびし山」がそびえる。手前にはとんがり屋根の屋敷が。ムーミン谷を再現したジオラマを見てて、童心に帰るのだろうか。熟年男性もスマートフォンのカメラを向けていた▼丸井今井札幌本店で開かれている「ムーミン展」(8月4日まで)。原作者のトーベ・ヤンソンさんの生誕100年にちなんだ催しで、150点もの原画が札幌に集まるのは初めてという▼第1作が発表されて69年になる。女優の岸田今日子さんのアニメ版の声を聞いて育った人も多いのでは。これほど長く愛される秘密はどこにあるのか▼翻訳を手掛けた冨原眞弓さんは「架空の生きものにことよせて等身大の人々の悩みやあこがれについて語っている」(「ムーミン谷のひみつ」)と指摘する。登場する仲間は不器用で欠点も多い。そうした点も多様さとして認め合える社会こそが正常だ、と訴えているように思う▼ヤンソンさんは先の大戦中、風刺雑誌で挿絵を描いていた。自由を圧迫するものは容赦しなかった。母国フィンランドで略奪をするドイツ兵の顔を、すべてヒトラーにしたほどだ▼ごり押しがまかり通るこのご時世。ヤンソンさんがいたら、「ムーミン谷の仲間たち」のこのせりふを、われわれに突きつけるに違いない。<怒れない、そこよ問題は。闘うすべを学ばない限り、自分の顔を持つことができないのよ>2014・7・26

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