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卓上四季

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わが家のみそ汁

小説家の井出孫六さんは、子どものころに食べたみそ汁の味が忘れられない。「ツンと鼻をつく刺激臭」と、同名の随筆(「昭和、あの日あの味」新潮文庫)で書いている▼生まれ育った信州・佐久では戦前、みその仕込みが農家に限らず、主婦の腕の見せどころだった。大豆の炊き具合、麹(こうじ)の吟味、塩の分量…。「醸造技師の趣があった」とも表現している。その家の空気がみそ汁に凝縮されたらしい▼きょうは勤労感謝の日。もともと、米や豆などの五穀の収穫を祝う新嘗(にいなめ)祭が前身である。この日に合わせて収穫祭を催す地域もある。五穀をおいしく頂くには、主婦の力が大きいのは今も変わらない▼内閣府が、専業主婦の仕事を賃金換算している。年収300万円程度に当たる。大卒の新人正社員並みだ。食事やそうじ、洗濯、そして家族の世話。24時間気が抜けない“自宅勤務”であることを考えれば、大変な仕事である。評価が低すぎないか▼政府は労働力不足を背景に主婦の労働市場への参入を促そうとしている。家事の負担を軽減できなければ、主婦だけが過重になる恐れがある。勤労を感謝するだけでは喜ばないだろう。夫が家事を協力するにしても、男性も忙しい▼自家製みそを味わうのは難しいかもしれないが、せめて家族が顔をそろえて食事ができるゆとりがほしい。走りだしたセンセイたち。時短への取り組みもお忘れなく。2014・11・23

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