償いの道 再犯を防ぐ
<5>82歳 出所後すぐ万引 衣食住ままならぬ現実 (2007/12/16)
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「今度、出所したら、どうするつもりですか」「もう、生きては出てこられないと思います」−。背筋をぴんと伸ばし、八十歳を超えているようには見えないきりっとした表情で、勇(82)=仮名=は裁判官の問い掛けに答えた。懲役三年六カ月の実刑を言い渡された。
昨年のクリスマスイブ。札幌市内のスーパーで、好物のおはぎや総菜など千円分を万引した。この二週間前、やはり窃盗による二年半の刑期を終えて出所したばかりで、逮捕された時の所持金は百六十円だった。 勇が泥棒に手を染めたきっかけは、二十歳の時、社会に対する反感からだった。徴兵で中国大陸に行き、終戦前に帰国した。近所から敵前逃亡と勘違いされ、冷たい視線を浴びた。「兵役をまっとうしたのに。まじめにやってもばからしい」。この後、泥棒を重ねては逮捕され、勇の刑務所での生活は、人生の半分近い三十六年になる。 福祉施設代わり 勇のような高齢の犯罪者が出所後に直面する現実は厳しい。身元の引受先がないにもかかわらず、更生保護施設に入れる人はわずかだ。施設は仕事が見つかるまで一時的に寝食の場を提供するのが目的で、道内の更生保護施設の関係者は「就職が難しい高齢者は、施設を出るめどが立たないため、受け入れられない」と打ち明ける。 勇は昨年暮れの出所後、知人に同居を断られ、逮捕されるまで空き家に住んでいた。札幌市の窓口で生活保護の相談をしたが、住所不定を理由に支給されなかった。 法務省によると、二○○五年、犯罪を十回以上重ねた者のうち、六十五歳以上が占める割合は、十年前の二・五倍の20.3%。高齢者の犯罪の約六割は窃盗や無銭飲食などで、食うに困って何度も罪を犯す姿が浮かぶ。 昨年の刑法犯に占める高齢者の割合も12.1%と、十年前の三倍になった。犯罪情勢に詳しい龍谷大法科大学院の浜井浩一教授(犯罪学)は「受刑者の高齢化率は、社会全体の高齢化を上回る速度で進行し、今や刑務所が福祉施設の代わりになっている」と指摘する。 勇にも更生を誓った時期があった。「還暦も近いし、まっとうに生きよう」。五十代後半からの約十年間は、心を入れ替え、地下鉄工事で働いた。しかし、バブルがはじけて職を失うと、また泥棒に走った。 更生の支援急務 勇と同じように、五十代になって更生の機会が訪れた男性が道内の更生保護施設にいる。三年前、働いていた建設会社が倒産し、札幌市内でホームレス生活の末、万引で捕まった。 男性はまだ比較的若く更生の見込みがあると判断され、釈放後すぐに道内の更生保護施設に入所でき、建設会社の職も得た。「施設に入れなかったらホームレスに戻って、また盗みをやっていた。今度こそ、ちゃんと働いて自立したい」。男性は、更生の最後のチャンスと自覚している。 恵まれない家庭環境や心の病気、生活苦。罪を犯して刑務所に入るまでの境遇はさまざまだ。一方で、犯罪全体の六割が再犯者によるという重い現実がある。犯罪を防ぐには、警察などの取り締まりとともに、犯罪者を立ち直らせ、支援する取り組みも急がれる。=おわり= (報道本部の宇佐美裕次、山岡正和が担当しました) |
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