どうなる水産王国 200カイリ30年
<1>争奪戦 海外需要に「買い負け」 (2007/11/12)
米国、旧ソ連、日本が相次ぎ二百カイリ経済水域(漁業水域)を設定して、今年で三十年。遠洋から沖合・沿岸に回帰した日本漁業は資源の減少、漁業者の高齢化など多くの問題を抱える。国内漁業とともに、日本の魚食を支えてきた輸入も、世界的な水産物需要の増大を受け、転換点を迎えている。水産王国・ニッポンと、生産額で全国の二割を占める北海道漁業の現状と課題を追った。(編集委員 本田良一、久田徳二)
「はい。ウニとサーモン」。威勢のいい職人の声が響く。 JR札幌駅直結の札幌ステラプレイスの回転ずし「根室花まる」。人気が高く、客足は絶えないが、「はなまる」(根室市)の清水鉄志社長(54)は素直に喜べない。マグロ、サーモン、カツオなどネタの仕入れ値が、軒並みじりじりと値上がりしているのだ。 昨年十二月、最低ランクの皿を十円値上げして百三十六円にした。マグロは一ランク上の百八十九円。「もう上げられない。質を落とすことなく、工夫して、頑張るしかない」 小樽・手宮市場の老舗「木村かまぼこ店」の店主・木村光雄さん(67)も「いまは我慢するだけ」。原料の道産スケソウダラのすり身がこの一年で二割ほど高くなった。 水産物値上がりの背景には、世界的な需要拡大がある。牛海綿状脳症(BSE)や鳥インフルエンザを受けて欧米での魚志向が広がり、経済成長が続く中国、ロシアなども大量に魚を買い始めた。 「需要増の要因は変わらない。価格は長期的に上がっていく」と水産大手の日本水産の原田厚・海洋事業推進室長(52)。同社は一日、ちくわなど練り製品の5−15%値上げに踏み切った。 輸入量2割減 二百カイリ時代に突入した一九七七年以降、日本の水産物輸入はじわじわと増加。八五年のプラザ合意による円高定着で拍車がかかり、輸入は一貫して増加傾向を続けてきた。 ところが、最近はその構造が一変。二○○六年の日本の水産物輸入量は三百十五万トンと、ピークの○一年に比べて二割近く減った。円安もあり、いわゆる「買い負け」が起きているのだ。 例えば、カツオ。昨年は鹿児島県・枕崎港などへ台湾漁船を中心に約五万トンを水揚げしたが、今年は八月末で、前年同期の半分の一・八万トン。 ツナ缶の原料として高値でカツオを買い付けるタイへ流れたためだ。日本一のカツオ水揚げ量を誇る静岡県・焼津港。片山啓太郎・焼津漁協常任理事(67)は「日本の漁船が、日本水域でとったカツオもタイへ流れる」と話す。 「買い負けではなく、売り負け。日本はデフレで末端価格が上がらないから、高い価格で輸入しても売れない。かつてと違い、日本に価格の主導権がなくなった」。東京・築地市場の関係者は指摘する。 転進する大手 貿易構造の変化を受けて、大手はマーケットを日本以外に求め始めた。 日本水産の総売り上げのうち、海外への販売は二○○○年三月には10%だったが、○七年三月には17・9%へアップ。これを同社は、五年後には30%まで増やす計画だ。 原田室長は「積極的に増やすのではなく、自然にそうなる」とみる。 国連食糧農業機関(FAO)は「世界の水産物は二○一五年には総需要の6%、千百万トンの供給不足が起きる」と予測する。いま回転ずし、かまぼこ業界などを苦しめている動きは、水産物をめぐる世界的な争奪戦の始まりを告げる序章にすぎない。 |



