どうしんウェブ 北海道新聞

しりべし旅日記

ニセコ駅新旧名物 心行き交う「交差点」 (2012/05/01)

 ヨーロッパのロッジを思わせるJRニセコ駅に、人気のカレーを出す喫茶店があると聞いた。店の名前は「茶房ヌプリ」。地元の人々や旅行者に愛される店を訪ねた。


 店主は、倶知安町生まれの松田保さん(55)と、佐賀県出身の裕子さん(55)夫妻。釣りが趣味の夫妻は、25年前に羊蹄山麓に自宅を構え、1991年に開店。「毎日釣りができる場所が条件」だった松田さんは、近くに尻別川が流れるこの地が気に入った。

 店で何を出すか。子どもからお年寄りまで利用する鉄道の駅。列車の時間が迫っている人もいるはず。選んだのはカレーだった。松田夫妻は30年ほど前、米国ロッキー山脈の川を釣りをしながら旅をした。ずんどう鍋で煮込んだカレーを毎日食べながら。カレーには特別な思いがあった。

 数年前のことだ。来店した中年の夫婦の会話が裕子さんの耳に入った。

 「あなた、良かったわね。もう一度ここのカレーが食べられて」

 「ああ、本当だね」

 事情を尋ねると、北海道旅行する度に、必ずヌプリのカレーを食べていたが、夫が大病をして、ようやく病気が治って来たという。妻の目には涙が光っていた。

 「逆にご夫婦のどちらかが他界して、思い出を胸に訪ねてくれる方もいます」と松田さん。花が飾られた窓際、多くのアンティーク時計とランプ。時が止まったような店内で、客はまるで自宅にいるかのようにくつろぐ。口に運んだカレーには、評判通りの深い味わいがあった。  駅の向こう側には、3月31日に開局したばかりの地域FM「ラジオニセコ」(木原くみこ放送局長)がある。隣の温泉施設「綺羅乃湯(きらのゆ)」とともに新しいニセコ駅前の顔だ。

 初々しいパーソナリティーの宮川博之さん(40)=函館市出身=と、竹内祥子さん(23)=岩内町出身=が出迎えてくれた。

 ラジオという世界に飛び込んできた2人は、地域を丁寧に取材し、きめ細かな情報を電波に乗せる。

 開局して1カ月だが、すでに町民のリスナーが息子が残したCDを持ち寄り、曲をリクエストしてくれたり、応援の手紙や電話も多数寄せられているという。もう一つの人の交差点が生まれようとしている。(イラスト・永井千恵 文・相原秀起)

<メモ>
 茶房ヌプリ ニセコ町中央JRニセコ駅内。営業時間午前11時〜午後7時。水曜定休。特製カレー735円、長いもとベーコンカレー1050円、コーヒー420円。(電)0136・44・2619。ラジオニセコは同町中央通33、(電)0136・55・5762

しりべし旅日記 コンテンツ一覧

このページの先頭へ