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ピヤラ アイヌ民族の今

伝統文様に情熱の息吹 (2012/05/08)

故チカップ美恵子さん、釧路芸術館で回顧展

 アイヌ民族で、釧路生まれのチカップ美恵子(本名・伊賀美恵子)さんの回顧展が道立釧路芸術館で開かれている。地元で本格的な展覧会が開かれるのは初めて。刺しゅう、詩、エッセー、講演など多方面に活躍したチカップさんはどんな人物で、どのような作品を作ってきたのか―。故人の人生を基に振り返った。(荻野貴生)



チカップ美恵子さん
 チカップさんは1948年、市内千代ノ浦(現宮本町)で生まれた。中学卒業後、母の伊賀ふでさんから刺しゅうを学んだ。阿寒湖畔で仕事をしていた時に旅行中の大学生と出会い、劇的な恋愛の末、結婚。19歳で東京に行った。

 東京時代、18歳の時に亡くなった母親の日記を読むうちにアイヌ民族を意識するようになり、25歳で本格的に刺しゅう家としての活動をスタートさせ、80年代以降、国内外で展覧会を開催するようになる。

 チカップさんが一躍注目を集めたのは85年の肖像権訴訟。著作物に無断で顔写真を掲載されたことに関し、出版社などを相手に提訴し、88年に和解した。また、国際会議参加や講演活動を通じてアイヌ民族の文化、人権などを訴えた。

 88年に離婚。以後は札幌が創作活動の舞台となる。90年代以降は刺しゅう作品の制作と講演活動を軸に精力的に活動。94年にはタレントの黒柳徹子さんが司会を務めるテレビ番組「徹子の部屋」にも出演した。

 チカップさんを知る人は皆、情熱的でまっすぐな性格だったという。晩年は急性骨髄性白血病に苦しみ、刺しゅう作品はほとんど制作しなかったが、2010年に亡くなるまでイラストやエッセーを中心に創作活動を続けた。

 チカップさんの刺しゅう作品について釧路芸術館の寺地亜衣学芸員は「アイヌ文様は抽象的なデザインだが、チカップさんの作品はその文様を使いながら鳥や花などの図案を描いたのが特徴的」と指摘する。

 タペストリーの作品「コタン・コロ・カムイ」(大地を守る鳥神)はアイヌ文様でシマフクロウを描いている。タペストリーの「アパッポ」(花)もアイヌ文様を組み合わせて花を描いた。

 沖縄文化とアイヌ文化の共通性を感じたチカップさんは何度も沖縄を訪れ、現地で展覧会も開催している。敷物「サッ・レラ」(夏風)は沖縄の熱い風のイメージでデザインが施されている。

 展覧会では本紙の植村佳弘カメラマンがチカップさんの作品を撮影した写真43点も展示。寺地学芸員は「自然をイメージした作品のため、森や湖、空などをバックに写真を撮ると、作品がひときわ映えるのも特筆すべき点」と解説する。

 詩やエッセーも多数、執筆。本だけでなく、新聞や企業の社内報などにもチカップさんの文章は掲載された。生まれ故郷・釧路への思いは強く、道東の自然をテーマに書かれた作品も多い。

 「釧路でぜひ展覧会を開きたい」と生前、周囲に漏らしていたチカップさん。望みは亡くなってから実現することになった。


 「チカップ美恵子展―アイヌ文様刺繍(ししゅう)と詩の世界から―」(道立釧路芸術館、北海道新聞釧路支社主催)は6月27日まで開かれている。

 タペストリーなどの刺しゅう作品約90点、原画・イラスト55点、詩・エッセーのほか、本紙植村佳弘カメラマンのチカップ作品を撮影した写真など計約220点が展示されている。

 開館は午前9時半から午後5時(金・土曜は午後6時)で、月曜日休館(6月25日を除く)。観覧は大人500円、高大生250円、小中生100円。問い合わせは同館(電)0154・23・2381へ。

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