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ピヤラ アイヌ民族の今

阿寒湖アイヌシアターの目玉・人形劇「クマ神さま」 豊饒な世界観表現 (2012/01/10)

獲物のサケをたくさん背負い、小川を渡るクマ神さま。いつもは軽々と飛び越えている小川が急に増水し、下半身がびしょ濡れに
 
人間が行うクマ送りの儀式で、クマ神さまの魂が抜け、空から自分の着ていたクマの身体を見る場面。アイヌ民族の世界観を雄弁に物語る
 
舞台中央に埋め込まれたオブジェから吹き出す炎。幻想的な雰囲気を醸し出すのに一役買う
 
半円形のステージいっぱいを使って行われる人形劇。すり鉢状に周りを取り囲む客席から見下ろせる
 釧路市阿寒湖温泉に4月29日に本格オープンする阿寒湖アイヌシアター「イコロ」の目玉となる人形劇「ふんだりけったりクマ神さま」は、コミカルな中にもクマ送りの儀式などを盛り込んでアイヌ民族の豊饒(ほうじょう)な世界観を表現している。昨年12月17、18の両日行われたプレ公演と劇作りに関わる人々の話から、そのアウトラインをたどる。(文・村岡健一、写真・桜井徳直)


【民族文化、気軽に学べる場に】
「イコロ」での人形劇上演を提唱 本田札大副学長に聞く


本田優子・札大副学長
 イコロでの人形劇上演を提唱した札幌大の本田優子副学長(アイヌ文化)に、狙いや意義を聞いた。(聞き手・村岡健一)

 アイヌ民族の物語は、主人公が空を飛んだり水に潜ったりして生身の人間が演じるのが難しいものもあり、アニメか人形劇がいいと考えた。阿寒湖畔で人形劇をやるのは特別な意味がある。木彫の工芸家がいて、着物を作る作り手がいる。人形ができたら売る場所もある。

 クマ神さまは何となく間の抜けたユーモラスな存在だが、アイヌ文化には、神様にも多様な個性があることが分かる。クマ送りなどを通じ、神様とアイヌ民族の関係が理解できる貴重な物語だ。

 クマ送りはアイヌ文化の核であり神髄。40分の劇で異文化を完全に理解するのは難しいが、子供にもかなりの部分を分かってもらえると思う。そして、「あれは何だったんだ」という疑問から、異文化理解への第一歩が始まる。

 人々がアイヌ文化の解説本や絵本などの書物に触れる機会は少ない。ここに住んでいるアイヌ民族がアイヌ民族の物語を演じることにより、自分たちの文化の神髄を学んでいくことに価値がある。劇を見る阿寒湖畔の方にとっても、アイヌ民族、和人問わず、アイヌ文化を気軽に学べる貴重な場となる。

 道民はどうして自分がここにいるのか、ルーツを自覚できていない。開拓の歴史を検証し、アイヌ民族の歴史を知ることで初めて自己認識できる。この土地の生み出したアイヌ文化を理解することで初めて、この土地に根を張ることができるはず。欧米などに関心を持つ人は多いが、足元の文化を理解できて初めて、他文化理解ができるのではないか。

【本公演の見どころは】
脚本・遠州さん 神との関係、大きなテーマ/演出・北村さん せりふや動き、さらに磨く

 原作は、ユーカラ(口承文芸)記録者金成マツ(1875〜1961年)の残したウエペケレ(民話)。脚本化した札幌市こども人形劇場こぐま座の遠州まさき専門指導員に見どころを、演出者の人形芝居ひつじのカンパニー(福岡)の北村直樹代表に、本公演までの課題を聞いた。


遠州まさき・専門指導員
 遠州専門指導員 アイヌ文化を語り継ぐ機会はあまり多くないが、人形劇なら大人も子供も楽しみながら伝習できる。原作とは場面の順序を一部変え、物語の流れを理解しやすくした。人と神、神と神の関わりが大きなテーマ。クマ送りしてもらうのは、クマにとって幸せなんだという、人間にとって都合のいい見方もあるが、その辺も面白さの一つ。物の見方を考えるきっかけになれば。




北村直樹代表
 北村代表 出演スタッフ全員が、人形劇を演じるのは初めて。人形がお客さんからどう見えているか、せりふがどれだけお客さんに届くか未体験。プレ公演では、ぼそっと言うべきところを大きな声で言ってしまうなど、一本調子のところが見られた。より分かりやすくなるよう、せりふや動きに気を付け、いいものに仕上げたい。



【あらすじ】
 山を治めるクマ神さまは毎年秋になると、クマの外見をした毛皮と肉を着て地上の国へ下り、サケを捕る。たくさんのサケを背負って帰り、豊かに暮らしていた。奥さんにほめてもらいたくて一生懸命だった。

 ある年、山ほどのサケを背負って戻る途中、いつも通る小川を歩いて渡ろうとすると、急に増水して腰までずぶ濡れに。「とんでもない」と腹を立てて歩いていたら、2人の美女に声をかけられた。獲物のサケを大木の根元に置いて離れ、接待を受けた。

 それから、次々にクマ神さまを災難が襲う。クマ神さまが、地上の国の神様や人間に振り回された訳とは…。

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