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Oh!さっぽろ

官が高すぎ?民が低すぎ? 現業部門 給与格差 (2007/07/28)

市のごみ収集車(手前白)と民間委託したごみ収集車(奥の青色)は、台数はほぼ同じだが職員の給与は差がある。官が高すぎるのか、民が安すぎるのか…=市中央清掃事務所

 「自治体のごみ収集や給食調理員といった現業部門の職員は、民間と比べて給与水準が高すぎる」。最近、政府がこうした調査結果を発表し、現業部門の職員給与を下げるよう促している。だが、働いても生活保護費以下の収入にとどまるワーキングプア(働く貧困層)が増えている。民間の賃金が低すぎるのではないか。政府の「地方バッシング」の色も濃い。官民給与格差の本当の問題は何か。(志子田徹)

月給12万円

 中央区の男性、Sさん(47)。二十三歳のときに過労で身体を壊して以来、職を三回変えた。今はビルメンテナンス会社の社員。政府の調査では「用務員」に分類される。

 朝七時から市内数カ所の雑居ビルなどを回り始める。ビルに着いたら最上階から一階ずつ掃除をしながら降り、電灯や非常口を確認。建物の周辺の清掃や片づけも行う。マンション退去者があれば、部屋をきれいにする。独身のSさんが誰も待っていないアパートに帰宅するのは午後六時近く。一日の労働時間は十時間を超えるが、残業代は出ない。

 それでも、「今までやってきた仕事の中では身体が一番楽」とSさん。しかし、あまりに賃金が低い。社会保険には入っているが、その分が引かれると月給は約十二万円。ボーナスも出たり出なかったりなので、年収は二百万円に届かない。

 Sさんは訴える。

「この給料では冠婚葬祭にも出られない。毎日、何の費用を削ろうかって考えている。官が下がれば民はさらに下がる。現業職は官も民も、どんどん給与が下がっていく悪循環に陥るのではないか」

政府の狙い

 総務省は七月初め、都道府県、政令指定都市の技能労務職員(現業部門)と民間企業の類似職種の平均給与の比較調査を発表した。札幌市で対象になったのは清掃職員、用務員など現業の五部門=表参照=。政府は、自治体の職員が民間の従業員に比べ軒並み高くなっているとし、改善を促した。

 だが、札幌学院大の片山一義准教授(労働経済)は「政府が調査対象にあげた民間の現業職給与は年々下がり続けており、その方が問題だ」と指摘する。

民間は低賃金で生活困窮

 道内の民間の現業職の月給を一九九九年と二○○五年で比べると、とくに「自動車運転者」は三十三万四千六百円から二十八万三千五百円まで五万千百円も減り、「守衛」は二十万三千八百円から十六万六千九百円へ三万六千九百円下がった。

 「民間はパートや派遣など非正規雇用が進んで、賃金は生活できないほど低い水準まで落ち込んでいる。公務員まで非正規雇用を増やして人件費削減に躍起となれば、住民サービスの低下を招きかねない」。片山准教授は、政府が天下りなど自分たちの問題に批判の矛先が向くのをかわす狙いがあるとみる。

市長が反論

 政府の調査に関して札幌市の上田文雄市長は今月上旬の記者会見で「市職員は数十年働いた人が対象だが、民間分には退職後に再就職した方や非正規労働者も入っているのではないか」と指摘し、官民の給与差は当然出ると反論。さらに「労働の価値について『安ければいい』というものではないと思う」と主張した。

 胸を張る上田市長ではあるが、札幌市の清掃業務に関しては「市職員給与は高すぎる」として、市議会でも繰り返し取り上げられてきた。民間の人はどうみているのか。

 札幌市のごみ収集を委託されている民間会社の社員、白石区のTさん(36)は入社以来十年間、ごみの回収作業に従事しているが、手取りは月額約十八万円。会社が昇級を抑制しているため、十年間で一万円しか上がってない。「正直言って、この給料じゃ家族持ちは食べて行くことができない」。二年前までは会社に内証で夜間のアルバイトをやった。今は妻(35)が毎日、パートに出て何とかやりくりしている。同僚も大半が共働きだ。

清掃職員では1.4倍の開き

 札幌市は清掃職員の民間委託を進め、収集車は官民で半々。仕事の内容はほとんど同じだが、政府調査では、札幌市の清掃職員の平均給与は月額四十二万五千九百円。市内の民間の廃棄物処理業従業員の平均月額二十九万七千百円と比べ、一・四三倍の開きがある。

 ただ、市は民間委託料を年々減らしており、○六年度は三年前より民間が一台増えたのに約八千万円少ない二十三億四千万円だった。一方で、市清掃職員の特殊勤務手当は月平均二万四千五百七十一円で、これは給食調理員や運転手など市のほかの現業部門が特殊勤務手当を廃止した中では、突出して高いまま残っている。

 市職員と同じ仕事をしているのに、給与差はどんどん開く理由が、ここにある。

 Tさんはいつも釈然としないものを感じている。「同じ仕事をやっているのに、市職員は人手も余裕があって楽をしているように見えるのに、待遇がいい。不公平がないなんて言えないじゃないですか」

 「それよりも」と言ってTさんは、最後にこう付け加えた。

 「市職員の給与が上がろうが下がろうが関係ないんです。とにかく僕の、この給料を少しでも上げてほしい」

コスト偏重社会こそ問題

北大大学院
道幸哲也教授
 官民の給与格差問題はどうすれば解決できるのか。北大大学院の道幸哲也教授(労働法)に話を聞いた。


 政府の調査を額面通り受け取れば、地方公務員の現業職給与は民間よりずいぶん高いと、多くの人は感じるはずです。仕事内容がほぼ同じなら給与格差に合理性は見られないため「公務員だから優遇されている」というねたみも生じやすい。

 でも、賃金制度をつくったわけでもない現場の公務員をバッシング対象にするのは、筋違いではないでしょうか。最近の政府の動きからすると、今回の調査は地方公務員、労働組合たたきを狙ったのかと勘繰りたくもなります。

 いま一番考えなければいけない問題は、コストや損得だけを偏重する社会のムード、あるいは公務員のように身近な人が少しだけ優遇されていることを許さないねたみ感情のまん延を、どうやって転換するかです。

 最近は、誰もがまるで経営者やコンサルタントのように会社や自治体を見ており、すぐに「コストを下げろ」「無駄を省け」と大合唱します。しかし、成果主義や能力主義をありがたがって市場原理に任せるだけでは、誰もが賃金が下がり続ける社会に陥る危険があります。

 ワーキングプア(働く貧困層)と言われる賃金の安い民間の労働者が、実際にどういう生活を送っているか、直視しなければなりません。そのうえで、生活の現実感がある賃金制度を組み立てることが重要になる。具体的には、年収がどれだけあればどういう生活が送れるか、実感のあるモデルを設定してそこを目指すところから始める必要があります。


技能労務職の札幌市職員と民間の類似職種との給与比較(単位・千円)
  政令市平均 札幌市   民間      
  平均月給 平均月給 人数(平均年齢) 平均月給 市と市内民間の比較 市と道内民間の比較 市と全国民間の比較
清掃職員(廃棄物処理従業員)
455.9
425.9
714(46.1)
297.1
1.43
1.71
1.42
学校給食員(調理師)
359.8
375.7
399(49.1)
255.2
1.47
1.51
1.46
用務員
399.3
390.7
598(47.8)
253.1
1.54
1.92
1.71
自動車運転手
467.5
463.8
137(54.1)
261.6
1.77
1.8
1.62
守衛
473.6
507.4
5(54.5)
186
2.73
2.71
1.98

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