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衝撃試算 2035年の北海道人口 (2007/07/12)

人口減と高齢化でシャッターの閉まった店舗が目立つ赤平市街。30年後の北海道の姿だろうか

 北海道の人口が、二○三五年に四百四十一万人まで減少する−。国立社会保障・人口問題研究所による衝撃の試算が五月末、明らかになった。二○○五年からの三十年で、空知・胆振・上川管内の人口合計にほぼ匹敵する百二十一万人が減り、人口規模は一九五○年代前半に逆戻りするというのだ。人口四百四十万人の北海道とは一体どういう社会なのか?そもそも、この推計はどこまで信頼できるのか?(佐藤千歳)

441万人まで減少 どんな社会に?

 道内人口が二割以上も減れば、働き手の減少、社会保障費の負担増、さらなる少子高齢化と、深刻な影響が予想される。

 道内のシンクタンク未来総研(札幌市北区)の原勲理事長は「人口減の最大の問題は自治体の財政赤字」と指摘する。自治体の主要な財源である地方交付税は、人口が算定基準の一つとなっており、人口減が収入減に直結するためだ。

 原氏の試算では、二○三○年には道内百八十の自治体のうち、百三十八自治体が財政赤字に転落する。原氏は「このままでは市町村が存続できない。何らかの手だてが必要」と警告。昨年には、三十年後の人口減社会に対応する大胆な設計図を提案した。

 「三十万都市」を基準とする市町村合併だ。

交付税減、自治体軒並み赤字 未来総研 「30万都市で生き残りを」

 背景に「最適自治体」という考え方がある。人口と面積、一般会計の予算規模からみて、一人当たりの行政コストが最小となる自治体のこと。

 原氏がはじき出した最適自治体は、人口十三万人、面積三百十一平方キロメートルで、予算規模五百六十五億円。室蘭市と伊達市が合併すると、ほぼ「最適自治体」になる。

 ただ、行政効率だけなら「室蘭+伊達」が最適だが、原氏は「一人の人間が、生涯をその土地で完結させるには、十三万都市では規模が小さい」とみる。

 この最適自治体を二つ合わせて三十万都市にすれば、大学、働く場所、文化施設、高度な医療を提供する総合病院などの機能が維持できるため、人口流出も抑えられる。

 三十万都市といえば、現在の旭川や函館に近い規模。原氏によると、江戸時代の藩に相当するという。

 「人口減社会では、満遍なく公共投資を続けることは無理。それでも人里離れて暮らしたい人は、電気や道路など公共サービスを受ける権利を主張せず、コストは自己負担すべきだ」と原氏はいう。

 ならば、北海道の基幹産業である農業や漁業はどうなるのか?

 農業について原氏は、耕地を集約し、法人化した大規模な農場を、都市に暮らす住民が経営する姿を想定。さらに、大規模農業の基盤に立ち、食品加工業などの産業を興すことを提案する。

 もちろん、原氏の主張には異論もある。長野大環境ツーリズム学部の大野晃教授は、人口を都市に集中させる施策に「森林の荒廃を招く」と批判的だ。上流の農村、中流の町、下流の大都市をそのまま保ち、一つの川の流域で市町村合併する「流域合併」を提案する。だが、人口分散による行政コストをどう維持するか、課題は残る。

 広大な無人の空間に、百数十万人を擁する大都市札幌と、約十個の三十万都市が浮かぶ。原氏の描く三十年後の北海道は極端にもみえるが、人口減社会をにらんだ一つのプランである。

 人口四百四十万人、うち四割が六十五歳以上というこの推計は、衝撃的だが、現実離れした数字ではない。社会全体で二○三五年の設計図を描くきっかけにできないだろうか。


国立社会保障・人口問題研究所による2035年人口推計のポイント

《1》東京と沖縄を除くすべての都道府県で人口が減る
《2》首都圏への一極集中が進む。全国に占める東京の人口の割合は9.8%から11.5%に
《3》65歳以上の老年人口比率が全国で増加。2035年には44都道府県で3割を超える

人口推計からみる2035年の姿

 
日本の人口
北海道の人口
道内の老年人口
(65歳以上)
道内の年少人口
(15歳未満)
2005年
2035年
1億2776万8000人
1億1067万9000人
562万8000人
441万3000人
120万7000人
165万人
72万人
36万3000人

都道府県ランキング

 
総人口の減少率(%)
年少人口の減少率(%)
2035年の出生率
(低い順)
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
秋田
31.7
和歌山
28.8
青森
26.9
山口
26.1
島根
25.4
高知
25.1
岩手
24.9
長崎
24.4
山形
24.0
愛媛
23.2
徳島
23.2
新潟
22.9
奈良
22.3
北海道
21.6
福島
21.2
秋田
52.3
和歌山
51.2
青森
51.2
北海道
49.6
奈良
48.8
長崎
47.5
愛媛
47.3
山口
46.9
岩手
46.7
高知
46.4
徳島
46.4
新潟
45.8
茨城
45.1
富山
44.7
島根
44.2
東京
0.99
北海道
1.14
神奈川
1.16
京都
1.17
奈良
1.18
埼玉
1.19
千葉
1.19
大阪
1.20
福岡
1.23
兵庫
1.24
宮城
1.24
徳島
1.28
青森
1.30
広島
1.30
高知
1.30


◇ 「441万人」どう推計? ◇

「都市への人口集中は今後30年も続く」と話す小池司朗主任研究官
 国立社会保障・人口問題研究所(東京・社人研)は、「441万人」という推計をどうはじき出したのか?同研究所人口構造研究部の小池司朗主任研究官に聞いた。

出生率、人口移動に仮定値/首都圏集中で年少人口減

 ――三十年後の人口を予測する基本的な考え方は?

 「純粋に人口学的な推計です。過去二十五年の人口変化の傾向が今後三十年も大きく変化しない、という考え方に基づき、将来の出生率や人口移動を予測し、人口の増減を推計しました。政策や自然災害の影響は加味しませんので、推計より増減する可能性はあります。例えば、少子化対策の効果が出ると予測するなら、この推計を基に、出生率の仮定の値を上げて試算します」

 ――具体的な計算法は?

 「二○○五年の国勢調査を基準人口とし、男女別に五歳ごとの集団に分けます。各集団に人口移動や出生率の仮定値をあてはめ、三十年間の人口変動を推計します。最後に、全都道府県の合計が、二○○六年十二月に社人研が出した全国の推計人口と一致するよう補正します」

 ――将来の出生率や人口移動はどう予測しますか?

 「都道府県別人口推計には、《1》女性が出産する確率を表す出生率《2》推計期間中の生存者の割合を表す生存率《3》社会移動を表す純移動率《4》出生時の男女比−の予測が必要です。生存率と男女比は安定しており、重要なのは純移動率と出生率です。出生率は、全国平均と各都道府県の相対的な差の推移などから推測します。三十四歳以下の年齢層では、一九八○年以降、全国と各都道府県の差はほぼ一定です。北海道なら、全国平均より低いままで、今後三十年も全国との差は変わらないと仮定しました。一方、(高齢出産といわれる)三十五歳以上は、全国と各都道府県の差が縮小しているので、二○二○年までに全国平均との差がさらに縮小すると仮定しました。三五年の北海道の合計特殊出生率は、東京都の0・99についで低い1・14となります」

 ――純移動率も大事な数字ですか?

 「人口推計というと出生率との関係が注目されますが、都道府県別では純移動率が最も重要です。今回の推計によれば、首都圏への一極集中が持続します。東京の出生率は全国最低のままですが、一九九○年代後半から始まった都心回帰現象で、若年層の転入超過が続くとみました」

 ――北海道は年少人口(十五歳以下)の減少率が全国四番目。なぜでしょうか?

 「若年層の転出と出生率の低さが要因です。道東などは比較的出生率が高いのですが、全国の大都市でも突出して出生率の低い札幌市(○五年で○・九八)が、全体の出生率を引き下げる構図です」

 ――北海道の場合、二○○二年の推計より人口の減少幅が広がりました。

 「前回の推計は一九九五−二○○○年、今回は二○○○−○五年の傾向を重視した推計です。二○○○年以降、非大都市圏から大都市圏への人口流出が激しくなっており、北海道や東北など非大都市圏の人口減少幅が大きくなりました」

 ――この推計は、どう活用されていますか?

 「各自治体の介護保険事業や、少子高齢化対策など、保健福祉計画の基礎データとして使われることが多いようです。都道府県別人口推計に基づく市区町村別人口推計は、水需要やごみの排出量、スーパーの商圏人口予想など。変わったところでは、死亡数の見通しに利用したいという葬儀屋さんもいました」

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