老舗再生なるか 丸井今井新体制発足
<上>伊勢丹の手腕 ブランド多様 客と接点 (2005/11/01)
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福岡市の百貨店、岩田屋本店は、福岡県一の繁華街、天神地区にある。今年二月、同社の会議室に武藤信一伊勢丹社長の姿があった。七十人ほどの管理職を前に、武藤社長は「再建に成功したのは皆さんのおかげだ。もう伊勢丹から送り込む人材はいない」とたたえた。連結子会社化し、グループの一員となった同社への期待感がにじんだ。
岩田屋は創業二百五十年の老舗。博多大丸、福岡三越といった県外勢との競争、売り上げ不振、デフレによる資産価値下落で、二○○二年二月期連結決算で三百二十億円の債務超過に陥った。経営陣は金融機関に二百八十億円の債権放棄を要請する一方、伊勢丹傘下での再建を決断した。 岩田屋社長として送り込まれたのは伊勢丹で副社長を務めた佐久間美成氏。就任会見で「伊勢丹の経営資源をフル活用し、岩田屋を絶対に再建させる」と言い切った。「ファッションの伊勢丹」の人脈を駆使し、一年間で四十弱、三年間で二百近い「九州初」ブランドを投入した。 店頭に出る社長 それまで在庫管理などが主な仕事だった男性従業員に店頭に出るよう指導し、客からの要望を取りまとめて実現する社内組織を設立。社員の一人は「毎日、店頭に出て社員に声を掛ける社長の姿に、社員の意識は大きく変わった」と再建までの三年間を振り返る。「お客さまの声をメモにまとめて実現する仕組みは一九五○年代からやっていること」と伊勢丹関係者は説明する。 北海道ではあまりなじみのない伊勢丹だが、首都圏に直営七店舗、新潟、静岡、京都など地方六都市の子会社店舗を合わせ十三店舗を展開。二○○四年度の全店の売上高は四千三百四十四億円。その五割超の二千四百六十億円を新宿本店が占める。企業理念(指針)は「お客さま第一」。経営幹部が店頭に頻繁に顔を出し、売り場に気を配る。「入社直後から、店頭に注意を払い、お客の声を聞くことの大切さをたたき込まれた」と中堅幹部。 独創的な売り場 百貨店激戦区の新宿で、JR新宿駅から徒歩十分と地理的に不利な伊勢丹が、地域一番店として支持される理由はファッションだ。 衣料品仕入れを担当するバイヤーは百数十人。入社数年の若手が商品買い付けのため、ミラノ、パリ、ニューヨークなどのファッション先進地を繰り返し訪れる。 「バイヤー全員の海外出張を合わせると年間四百回を超える」(関係者)。新宿本店の販売力もあって、海外のアパレルと太いパイプができた。新宿本店で婦人服有名ブランドばかりを集めた「シンデレラシティ」など独創的な売り場づくりにもバイヤーの力が生きている。 大丸の札幌進出を機に、三年前の岩田屋と同じような経営危機に直面している丸井今井を、伊勢丹はどう立て直すのか。多数の新ブランドを投入し、顧客との接点を増やす売り場改革−岩田屋再建からはそんなイメージが浮かび上がる。ただし昨春、そごう撤退後に出店した小倉伊勢丹(北九州市)は、客の嗜好(しこう)が読み切れず苦戦している。 丸井今井には新宿本店長だった関根純氏ら大物二人を送り込むことが決まったものの、伊勢丹の支援姿勢は慎重だ。度重なる出資要請を拒否し、年末商戦には協力しないもようだ。関係者は「伊勢丹は丸井の実力を試そうとしているフシがある」と打ち明ける。 二百四十億円もの債務、難航した金融機関との協議、創業者一族の今井春雄氏の動き…。伊勢丹と丸井の歯車がしっかりかみ合うまでには、まだ時間がかかりそうだ。 丸井今井(札幌)がグループを二つに解体して新たに出発した。百貨店という業態そのものに逆風が吹き付ける中、狙い通り再生を果たせるのか。大手百貨店伊勢丹の支援のもと背水の陣を敷いた老舗が抱える課題を探り、今後を展望する。 |



