made in Japanの挑戦
ボブスレー ネット検索から始まった(2009/11/26)
シーズン本格化前、バンクーバー五輪のコースを使った練習で、4人乗り用そりを整備する選手たち=石井和男さん提供
「日本には素晴らしい技術があるのに、どうして“外車”に乗っているんだ」。日本チームの監督、石井和男さんはブレーカー(押し役)だった現役時代、外国のコーチや選手によく言われた。当時はそりを作るなんて想像もできなかったが、どこか心に引っかかるものがあった。
世界最高峰の自動車レースに例え、「氷上のF1」と呼ばれるボブスレー。2006年のトリノ五輪後、男子の日本チームは石井さんが中心になって、外国製のそりを改良し、世界に通じるマシン開発に挑んでいる。
現役を引退した後、イタリア製の自動車を改造して乗りこなすほど「車好き」の石井さん。トリノ五輪前の夏にコーチとして現場復帰し、そりを一目見て「これで勝てるわけがない」と感じた。車とよく似たボブスレーだが、比べると構造や外板(ボディー)などが見劣りしていたからだ。
外国勢は有名自動車メーカーが開発に協力し、毎年新しいそりをレースに投入している。しかし、日本には600万円もする外国製のそりを毎年購入する資金はなく、同じそりを何年も使い続けるしかない。これでは、進化する外国勢から取り残されるばかりだ。
トリノ五輪後に監督となった石井さんは、構想を温め続けた「そりの国産化」に着手した。世界の強豪国と同じように自動車メーカーとの提携も考えたが、「メーカーを特定すると、他社に良い技術があっても使えなくなる」と断念。選んだのは独自にチームを作り、日本にある外国製そりを改良する道だった。
手始めに、インターネットで「ボブスレー」を検索。数万件がヒットした中から、徳島県の物理学者、井口和基さんのホームページを発見した。井口さんはトリノ五輪のボブスレーを独自の視点で分析していた。
「この人だ!」。直感を頼りにメールを送り、井口さんから航空力学や工学の専門家を紹介してもらった。専門家同士のつながりで十数人のメンバーがそろい、06年夏に「第1回ボブスレー工学研究会」を開いた。開発のスタートラインに立った。
バンクーバー五輪に向け、日本独自の技術で世界に挑む人たちがいる。選手の戦いをサポートする「もう一つの戦い」を追った。(佐藤大吾)
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