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現代かわら版

ピロリ菌、退治は簡単 記者が北大病院で治療体験 (2009/05/29)

ピロリ菌外来で、除菌治療について記者に説明する加藤元嗣准教授=北大病院

ピロリ菌に感染しているか、除菌できたかを調べる尿素呼気試験。水色のバッグに吐き出した息を分析すると分かるという

1週間飲み続ける除菌治療の薬のすべて。記者が薬局からもらった薬は、1日分をセットにしたもの、これが7つ入っていた

 国内で年間5万人が亡くなる胃がん。日本人の胃がんの大半は胃の粘膜に感染したヘリコバクター・ピロリ菌によるものだとされる。北大病院の浅香正博病院長らの研究で、ピロリ菌の除菌が胃がん予防につながることが分かり、日本ヘリコバクター学会も1月、感染者全員に除菌を勧める指針を出した。ただ、胃がん予防の除菌治療は健康保険の適用外だ。どう除菌するのか、費用は、効果は−。北大病院(札幌市北区)が3月、全国に先駆けて開設した「ピロリ菌専門外来」を受診、除菌治療を体験した。(文・岩本進、写真・水上晃)

呼気ですぐ判定

 北大病院ピロリ菌外来を受診したのは四月十六日だった。

 「胃に何か自覚症状がありますか」。加藤元嗣准教授(52)=光学医療診療部=の問診を受けた。記者(45)には気になる症状は何一つない。年齢が高いほど感染率は高いと聞くが、はたして胃にピロリ菌がいるのだろうか。

 「尿素呼気試験を受けてください」と、呼吸機能検査室へ。吐き出す息で感染の有無が分かるのだという。

 ピロリ菌検査は、内視鏡(胃カメラ)で胃の組織の一部を取って調べる方法と、内視鏡を使わずに呼気や血液、尿や便から調べる方法がある。この外来では、原則として呼気で調べている。呼気試験は菌がもつ特殊な酵素の働きでできる二酸化炭素の量で感染を見分ける。「簡便で精度が高く、内視鏡に比べ体への負担がない」と加藤准教授。

 検査室。「息を止めて、たまった空気を二回採ります」と説明された。採取バッグを口にくわえ、片手で鼻をつまみ、片手でバッグを持つ。「ふうー」と吐くとバッグが膨らむ。一分とかからない。

 次に錠剤の試薬を飲み、二十分後に再び同じ方法で呼気を採る。検査はこれで終わり。内視鏡のような苦しみもない。簡単だ。

 約三十分後、再び外来。加藤准教授から結果を伝えられた。「(感染を示す)陽性でした。除菌の薬を飲んでもらいましょう」。自分の胃の中にもピロリ菌はいた。いつの間に感染したのだろう。

薬を一週間服用

 加藤准教授の説明では、除菌法も簡単だ。

 胃酸を抑える薬と二種類の抗生物質の計三種類の薬を、朝と夕の一日二回、一週間続けて飲むだけ。これで80−85%の人は除菌できるという。除菌できなかった場合、薬の組み合わせを変えて再び一週間服用する。

 調剤薬局でもらった薬は、一枚のシートにカプセルや錠剤の薬が朝と夕の一日分ずつセットされていた。便利そうだ。「飲み忘れると除菌成功率が下がります。しっかり飲んでください」。加藤准教授の言葉を思い出す。

 翌十七日朝から服用を開始。「下痢や軟便、食べ物の味が分からないことがありますが一過性です」(加藤准教授)と聞いていた。

 味覚障害は感じなかったが、次の日から便が少し軟らかくなっていた。服用期間中も食事やアルコールなど生活に特に制限はない。最後の薬を飲んだのは四月二十三日。一回も忘れることなく飲みきった。後日気付くと軟便は元に戻っていた。

 除菌できたかどうかは、薬を飲み終えてから四週間以上あけて、再び尿素呼気試験や内視鏡検査で判定する。

 五月二十五日、判定の日。再びピロリ菌外来を受診した。初診時と同様に呼気を二回採り、その後、診察室に呼ばれた。

 「除菌できていました。良かったですね」。加藤准教授が笑顔で言った。一回の治療で、苦痛になるようなことは一切なく除菌できた。一カ月半の緊張が解けた。

 しかし、胃がん予防はこれで終わりかというと、実はそうではないらしい−。

除菌後は定期検査を

 胃がん予防のために、除菌後は何に気をつけたらいいのか−。北大病院ピロリ菌外来担当の加藤元嗣准教授に聞いた。

 ――除菌後の問題は。

 「胃酸の分泌の回復で10%程度の人に胸やけなど逆流性食道炎の症状が起きます。感染前の状態に戻っただけなので、あまり心配することはありません」

 ――再感染はあるか。

 「ごくまれです。年間1%程度。感染しても長続きせず消える人もいます」

 ――除菌したら胃がんにならないのか。

 「除菌は胃がんになる危険性を減らします。私たちの研究で発症が三分の一に減らせることが分かりました。ただ除菌しても胃がんになる可能性を決してゼロにはできません。

 感染で一度変化した胃粘膜の萎縮(いしゅく)や腸上皮化生(萎縮が強くて腸の粘膜のようになった状態)は完全には戻りません。これが強いとがんになりやすい。

 もう胃にがんができているかもしれません。内視鏡で見える大きさになるまで十年以上かかります。除菌から十数年後に見つかった実例もあります」

 ――では、胃がんを防ぐにはどうしたら。

 「除菌でピロリ菌がいなくなると、がんが成長するスピードを抑えることができます。ですから、除菌後は、年一回の内視鏡検査で、がんがないか調べてください。早期で発見すれば内視鏡で簡単に切除できます。胃がんで死なないために、胃がん死を減らすために、除菌後の定期的な検査が必要なのです」

(浅香正博北大病院長提供)
 ヘリコバクター・ピロリ菌 1983年発見。らせん状(ヘリコ)の細菌(バクター)。胃の粘膜にすむ。特殊な酵素でアンモニアをつくり酸から身を守る。長さ3マイクロメートル(1マイクロメートルは1000分の1ミリ)。感染は口からとされ、胃酸分泌が不十分な乳幼児期が圧倒的に多い。除菌しない限りほぼ一生すみつく。国内感染者は約6000万人。衛生環境との関連が指摘され、感染率は中高年ほど高く若い人ほど低い。20代以下は5−10%程度。胃炎、胃や十二指腸の潰瘍(かいよう)、胃がんの原因になる。感染すると全員が慢性の胃炎になる。このうち80−90%が胃の粘膜が萎縮(いしゅく)し酸分泌が減る萎縮性胃炎に移行。さらにこのうち10−15%が胃がんを発症する。


 ■治療費と外来案内 ピロリ菌の検査や除菌治療で、健康保険が適用されるのは現在、胃潰瘍(かいよう)と十二指腸潰瘍がある患者だけ。ただ、胃がん予防の場合は保険適用外で全額自己負担。北大病院ピロリ菌外来もそうだ。記者が受けた検査から判定までの1回の治療費は、同外来の場合28770−46830円。尿素呼気試験だけか、オプションの内視鏡検査を加えるかで料金が異なる。このほか院外処方の薬代6000円程度が必要となる。北大病院ピロリ菌外来は、月、水、木曜日の午後の診療。予約制。同病院光学医療診療部(内視鏡室)(電)011・716・1161内線7016(受け付けは平日の午後3時30分−5時)に申し込む。

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