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巨塔の半年 JRタワー

<上>膨らまぬパイ 景気低迷 客奪い合い

仕事帰りの女性客でにぎわう札幌ステラプレイスの衣料品店。平日のピークは午後6時から7時

(2003/09/08)
「あて外れた」

 「売り場面積だけが拡大したが、消費というパイは膨らんでいない」。JRタワー開業による効果で、札幌全体の売り上げが増加すると期待した大型店関係者の見方は、半年が経過した今、「あてが外れた」で一致する。

 札幌のあるカード社によると、地方在住者が札幌でクレジットカードを使って買い物をした額は、三月から五月にかけて前年同期比でそれぞれ数%多かったが、六月以降はほぼ横ばいだ。

 「開業の影響は六月以降ほとんど感じない」。丸井今井の旭川、小樽、苫小牧の各店は口をそろえる。それぞれの売上高をみると、前年同期と比べた増減比率がタワー開業以前とほとんど変わりがないからだ。

 小樽店は三月の売上高が前年同期比12・3%減少したが、四月以降は4−6%減とタワー開業前の水準に戻った。

 旭川店も四月に7・3%減少したが、それ以降は小樽店と同様の傾向だ。担当者は「これまで地元で欲しいものがなく、札幌に出て買っていた人がそのままJRタワーに移ったのでは」とみる。

主力は中級品

 大丸が「私たちから見れば本当に質の高い店」と警戒していたのは、同じ札幌駅前にある札幌西武。その西武の売り上げは、JRタワーが開業した三月以降、前年同期比20−25%落ち込んだ。「10%程度は覚悟していたが…」と関係者は肩を落とす。

 昨秋大通地区にオープンしたファッションビル「札幌アルタ」も売り上げが伸び悩み、テナントの二割を入れ替えた。山本耕司支配人は「東京の人気ブランドを集め、絶対の自信があったのに」と目算が外れたことを認めた。

 西武とアルタに共通するのは、若い女性に人気の高いブランドの品ぞろえが豊富なことだ。百貨店関係者は「不況でも若い女性の購買力は高いといわれてきたが、北海道は景気低迷が長引き過ぎて定説が通用しない。安価な割にセンスの良い衣料が豊富にそろうJRタワーに客が流れた」と分析する。

 「神戸店は山の手感覚の店のため高級品の品ぞろえを厚くしたが、札幌店は(平均的な購買層が集まる)駅の百貨店なので、中級品を主力にした」。大丸札幌店の小林泰行店長は同店の商品政策をこう説明する。開業当初の初年度売上高目標三百五十億円は、ほぼ同規模の神戸店の三分の一にすぎない。

 高級品を絞った結果、売上高目標の水準は下がったが、「上質路線」を続ける既存店の客を奪うことにつながった。

新しもの好き
 JRタワーがにぎわう一方で、札幌市清田区のイオン札幌平岡ショッピングセンター(SC)では一万円の低価格スーツが六月末から三週間のキャンペーン期間中に二千着以上も売れ、全国のイオンSCでトップの販売数になった。

 道内景気は一向に上向く気配はなく、四−六月の道内の完全失業率は前年同期を0・6ポイント下回る6・2%。全国平均よりほぼ1ポイントも高い。道内の雇用者所得は六月まで十カ月連続、家計消費支出も四カ月連続の前年割れだ。「安くて品質の良いものに支持が集まる」(イオンの植村忠規・北海道事業部長)のは当然なのかもしれない。

 新しもの好きだが、財布のひもは固い−。JRタワーは北海道の市場の特質を象徴している。(経済部 土田修三)



 JR札幌駅の複合商業施設「JRタワー」が六日で開業半年を迎えた。不況の中で船出した巨艦施設が、北海道の経済や消費にどのような影響を与えたかを検証する。

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