どうしんウェブ 北海道新聞

  • PR

  • PR

崩食豊食 <第2部> 輸入が止まったら

<1>農水省のシナリオ 寂しいメニューに絶句 (2008/02/21)

 中国製ギョーザ中毒事件は輸入食品の危うさを浮き彫りにした。しかし、日本は食料の六割を外国に頼る。もし、外国から食料が入ってこなくなったら、日本の食はどうなるのか。そんな「いざという時」のシミュレーションを農林水産省が六年前に行っていた。国内の耕地をフル活用すれば、国民一人二○二○キロカロリーを自給できるというのだ。農水省のシナリオに沿ったメニューを本紙記者ら四人が二週間食べ続けてみた。


 「うっ」−。一瞬、みんな息をのみ込んだ。皿の上に載っているのは皮がついたままのふかしジャガイモ。別の皿には盛りきりのご飯、やや多めの漬物、そして具のないみそ汁。

 一月末に始まった試食プロジェクト。初日午前七時半に会場となる札幌市内のカフェに集まったのは、本紙記者の松本悌一(42)、渡辺徹也(37)と北大生のタカオ(25)、道教大院生のフミコ(23)。

 農水省が「不測時の食料安全保障マニュアル」で示す食事例はイラストの通り。前半の一週間は、ほぼこの通りのメニューを食べる予定だ。

 参加前、タカオは「食費が浮き、規則的な食生活で体調が良くなりそう」、フミコは「自分一人では体験できないことなので興味を持ちました」と、それぞれの期待を語っていた。

 そして、採血や問診を経て始まった初日の朝食。もちろん、プロジェクトの趣旨も、基本メニューの中身も理解はしていた。だが、テーブルに並んだ現物を見て、みんな寡黙になるしかなかった。わずかにキャベツの漬物の緑以外には、色彩がない。「ビジュアル(見た目)的に寂しいですね」−そんな声が漏れた。

 それでも、物珍しさもあり、男性三人はあっさりと完食。朝食抜きのことが多いというタカオは「漬物とか普段食べないし、素朴な味がおいしい」と、満足げだった。イモを少し残したフミコも「量は多いけど、おいしいイモでした」と笑顔を見せた。

 昼の弁当として、イモとリンゴを持って学校や職場に向かった四人は、午後六時すぎに再び集合。みんな四時すぎぐらいには空腹を感じていた。イモ主体では、食べた直後は満腹でも、長続きしない。

 夕食は米、イモに加え、納豆とホッケの開き(四分の一)がついた。タカオが「ホッケの光る脂がいとおしい」と笑う。粗食とはいえ、みんなで規則正しく囲む食卓は、それなりに楽しかった。


最悪の場合、配給も

 農水省によるシミュレーションは、食料輸入が完全に途絶する最悪の事態を前提としている。

 完全に途絶する日が実際に来るとは考えづらいが、農水省が「不測の事態」に織り込むいくつかのケースが、いま現実に起きている。

 《1》有害物質の食品への混入(中国製ギョーザ中毒事件)《2》輸出国が輸出制限(ロシアなどが小麦輸出規制)《3》異常気象(オーストラリア干ばつ)−などだ。

 農水省は最悪の際は、放牧地や原野も開墾し、熱量効率が高い作物(イモ類)の作付けを増やすとする。食料配給や物価統制も行い、目標は一人二○二○キロカロリーの確保だ。

 このシナリオに対して、本間正義・東大教授は「作物ごとの県別生産割り当てなど、実際に生産するための方法論がなく、二○二○キロカロリー供給は無理」と指摘する。開墾から収穫までの時間差を埋める手だてもない。

 農水省は「価格高騰や輸出規制により、従来のような食料輸入はもうできない」(企画評価課)との認識に立ち、新年度、穀物の調達ルート拡大などを目指し食料安全保障課を新設する。

このページの先頭へ