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選択の前に 衆院選への視点

<1> 「党首人気」依存 統治能力の吟味不可欠 (2009/08/11)

 自民、民主の二大政党が政権を懸けて激突する衆院選の公示が来週18日に迫った。1994年の導入から15年が経過した小選挙区制度が政治に及ぼした影響も検証しながら、今回の選挙が問うものを考えた。


 お国入りの街頭演説もおわびで始まった。

 8月6日、福岡県飯塚市。麻生太郎首相は自らの失言などが自民党への信頼低下を招いたとして、「わたしの力不足を含め、率直におわび申し上げなければならない」と陳謝した。衆院解散以来、遊説先で繰り返す発言。昨年9月、総裁選に圧勝し、総選挙勝利を「天命」と言った当時の威光は見る影もない。

郵政選挙で定着

 党首が勝敗に及ぼす影響が飛躍的に増大した小選挙区制。小泉純一郎首相の下で自民党が圧勝した2005年の郵政選挙はその究極の形だった。「強い首相」に権力が集中し、官邸主導で果断に政策を決定する。そんな新しい政治スタイルが定着したかに見えた。

 それが「小泉後」の3年間は、首相が1年ごとに交代する混迷。自民党は統治能力そのものが問われ、政権転落のがけっぷちに追い込まれた。なぜ、こうなってしまったのか。

 見逃せないのは政策的に行き詰まった自民党が、小泉氏の成功体験をはき違え、「選挙の顔」だけに頼って延命を図ろうとした点だ。

 自民党長期政権を支えた、公共事業や補助金を通じた地方や業界団体への利益配分システムは、高度経済成長の終焉(しゅうえん)とともに限界を迎えた。利益配分に依拠した集票構造も劣化したところに登場したのが01年、新自由主義的改革を打ち出した小泉政権だった。

 「小泉政権」(中公新書)の著書がある東京大学の内山融准教授(政治学)は「新自由主義が是か非かは別にして、利益政治から理念を政治の対立軸にするという転換があった」と述べ、一度は自民党の新たな旗印を掲げた歴史的役割を認める。

 だが、国民が熱狂的に支持した小泉改革路線も、格差拡大などの負の側面が大きくなり、その後の政権は改革継承か修正かをめぐり迷走した。明確な旗印や真剣勝負の政策論議を欠き、リーダーとしての資質が厳しく吟味されることもない。選挙の顔だけを基準にリーダーを選ぶ「党首依存」の政治は、リーダーが人気を失えばただちに破綻(はたん)する。

 民主党も、安全保障、消費税率引き上げなどの路線対立を内包したまま党首交代を繰り返してきた混乱の歴史がある。06年に偽メール問題でその未熟さを露呈した後は、「選挙に強い」とされる小沢一郎前代表の剛腕に頼り、「政権交代」を唯一最大の旗印に政策論議を封印することで結束を保ってきた。小沢氏辞任後、短期間で選ばれた鳩山由紀夫代表の下でもその構図は変わらず、政権獲得後に論議不足のツケが回る可能性は十分ある。

短命政権を憂慮

 有識者団体「新しい日本をつくる国民会議」(21世紀臨調)の茂木友三郎共同代表(キッコーマン会長)は、今月2日の政権実績検証大会で、衆院の任期4年をフルマラソンに例え、「(途中で選手が代わる)駅伝型ではなく、42キロを完走する首相を」と短命政権が続く現状を憂慮。1年近い過酷な戦いが続く米大統領選の例を持ち出し、首相候補の「徹底的な吟味」を求めた。

 吟味すべきは党首だけではない。政党が掲げる理念と政策、実行する統治能力。政権選択のあらゆる要素を厳しい検証にさらし、有権者が目を凝らした末に投じる1票が、本当の民意に裏打ちされた強い政権をつくることになる。(堀井友二)

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